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■オオガミと露天風呂

 オオガミたちは一足先にダルトンの船で旅の支度小屋ガストンの小屋にいた。そこは外交の窓口として大勢の魔族が開国準備のため働いていた。

「なんだかやって来た時とはえらい違いだなダルトン」

「ああ入国者をチェックしないとな。いろいろやることが増えて大変だ」

 いずれこの入口辺りは再開発が行われダルトンがその管理者となる予定だった。そしてダルトンはオオガミたちのために大ヒクイドリを用意しながらそう言っていた。

「ではここで結構だ。あとをよろしく頼む」

「その鳥は出口で放しておいてくれればここへ戻ってくるはずだ」

 オオガミたち四人は地底世界を後にしていった。


 奇妙な階段が続く回廊を抜けるとかつてはヨモツ大迷宮と呼ばれた地底世界と地上をつなぐ通路に出た。

「ここも準備の魔族だらけだな。土産物屋までできているじゃないかやれやれだ。ハクトダルヌに修羅猿、一気に地上まで行くぞ」

「坊主どもは待たなくていいのか」

「ああ任務優先だ。ところでお前たちはどうするんだ」

「私たちはマナーコの遺跡に向かう」

「はてあそこに遺跡なんぞあったかな?」

「ああハクトとキビツが暮らした場所だ」

「そうか、ハルト市国からの道のりはわかるのか」

「修羅猿にインストールされている情報で問題はない」

「任せておけ、元領主さまだろシロクマってやつは何とでもなるさ」

「そうだったな。觔斗雲(きんとうん)もあるし心配はいらないということか、そこの扉を開けば地上だ」

 扉を押し開くとハルト市国のパラディンたちがいた。オオガミの顔を見ると

「外の飛行船でお仲間がお待ちです」

「ああ伝言有り難う、あとから晴明が来るのでよろしく頼むぜ」

 パラディンは頷くとまた警護の位置に就いた。


 オオガミとヤーシャがドーマハルト号に近づくと軽足団長が駆け寄ってきた。

「おや二人だけなのかまあいい、ヤーシャおかえり、オオガミの旦那も無事で何よりだ。向こうであったことを飯でも食いながら話してくれないか」

「あとは誰がいるんだ団長」

「今はわしだけだ。迷宮から誰か戻れば八雲の大将を呼ぶように言われている」

 飛行船の茶室は宝蔵院の研究所とつながっていた。

「晴人にも伝えておきたいことが沢山あるさっそく呼んでおいてくれ、俺は少し頭の整理をしたいので船の露天風呂に行ってくる」

 軽足は知らないがあの風呂嫌いであったオオガミのセリフである。そう自分で言っておいて晴人の笑い顔が浮かび自分でも苦笑いをするオオガミだった。

「まあこんな時こその風呂だな」

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