■伝えたいこと
突然ドアが開くと「何か爆発音が鳴ってたみたいだけど、なにかありました」久遠が入ってきた。
晴海と晴明のバイパス代わりにされた久遠はかなり疲労していたのかゴジルの屋敷に戻ると突然、意識を失いばったり倒れてしまっていた。宝蔵院が診察するとただの疲労だとわかり晴明も安心したが別の部屋で眠らせていた。そしてやっと起き出して晴海の部屋へ飛んできた。
そして抱き合う二人を久遠はいきなり目の当たりにして「天鼓君!これは・・・いったい」
「見ての通りですよ。目覚めたんですよ水無瀬さん」
急いで晴海に近寄るかと思えば、すぐさま部屋を出てオオガミとヤーシャを呼びに出て行ってしまった。そんな久遠の様子に気が付いて晴明はベットから起き上がり晴海寝かせつけた。
「ごめん、抱き着いたりしちゃって、晴海具合はどう」
下を向いたまま何も話さない晴海に宝蔵院は
「無理しなくていいんですよ。水無瀬さん、僕の顔、言っていることはわかりますか」
横になったままの晴海は軽く頷いた。にっこり笑った宝蔵院は
「よかった、意識障害はないようですね。まだ完璧に体調は戻っていないはずですがしゃべることはできそうですか?」
口を少し開け、絞り出すような声で
「ャ・・ヤーシャは・・・」
宝蔵院は首をかしげて何を言っているのかを考えたが晴明は
「大丈夫だよ腕は何ともないからね。すっかり元通りに晴海のママが治してくれたから気に病むことはないんだよ」
ちょうどオオガミとヤーシャが久遠に連れられてやってきたのだった。
「ほら見てごらんよ」ヤーシャを指さす晴明、ツーロン島でヤーシャの左腕を青龍の矢で吹き飛ばしたことを言っていると気が付いたのであった。
「よかった」胸をなでおろす。
「覚えているんだあの日のことを」
「久太郎と拉致されて百々目鬼の妖力で身も心も教団幹部のザグレットの支配されミリムと名付けられたの・・久太郎も元に戻っているしヤーシャだけが心配だったの」
ツーロン島の監獄で百々目鬼からマインドコントロールを受けて命令に逆らうことができなくなっていたのだが意識はそのままあったようだ。別の自分が愚行を行う自分を見ているかのようにそれは晴海にとって最悪の日々であった。
オオゲツの効果が出始めたのだろうか晴海は上半身を上げれるようになっていた。
「いいぞ、さあ残りのオオゲツスープを飲んで」
スープ皿にペースト状のオオゲツとスプーンを晴海に持たせが、晴海は唇とつんと尖らせて
「飲ませて晴明、さっきみたいに!」
「ええっ、晴海何処から覚えているの」
「この部屋に来てからずーと、でも体が動かなかったのあのスープを飲むまでは」意識があったとはとんだ眠り姫だった。
「もう、ダメだよ。困らせないでよ、天鼓も何か言ってよ」
「カグヤに見せつけてあげたいんだから、ところであの子は何処よ」
周りを見回す晴海だが黙り込むみんなに
「どうしたの、カグヤに何かあったわけ」
ちょうどそこへハクトダルヌと修羅猿が部屋に入ってきたのであった。
「目を覚ましたのか。アスタロトの従者は」
「違います!僕らの大事な仲間の晴海様です」ハクトダルへ訂正する久遠であった。
「あの・・・晴海のせいではないんです。あいつらが悪いんだ」
「・・・それでカグヤは」
「晴海は石化された際に負の感情や洗脳された部分を体から吐き出して崩壊しかけていたんだ。その足らない部分をカグヤが自らの体の要素で補填したんだ」
しばらく晴海は宝蔵院が何を言っているのか理解ができていなかった。
ハクトダルヌはカグヤの肩に手をかけて
「運命というものは時には残酷よ。彼女はこうなることを知っていたのよ。メメントモリのさだめを。
「天鼓マスター、晴海はこんなものを握り締めていたわ」
バーバレラは紫と緑のマーブル模様の石を晴海に渡した。
「それはカグヤが次の個体へと繋ぐ記憶、大事にあなたが保管しなさい」ハクトダルヌが言う。
カグヤのしなやかな髪の紫、それと強い意志を持つ瞳の緑を連想させる石を晴海はもう一度見た。
「ごめんなさい頭が混乱してところであなたたちは誰なの」
晴海はハクトダルヌやバーバレラら見慣れぬ顔ぶれにやっと気が付いた。
「晴海がいない間に知り合ったアガルタ、この地底世界の名前だけど出会った仲間だよ」




