◆晴海の記憶
「潮干狩りですか。いい思い出だったんでしょうね。水無瀬さんにとって大切なパパとママの」
「そうだよ。小学校に入って七歳の誕生日に百花から受け継いだ力が突然暴走を始めて青龍のミシエルに力の封印をお願いしたんだ。そのあと私たちは異世界に渡る決心をしたんだ」
「あの力を制御できていればアスタロトに操られることもなかったはずなのに」
竜宮丸のコックピットに座る水無瀬夫婦に天ミニが色々と話し始めた。
「七つの時ですか、よかった。捜査〇課に配属されたとき水無瀬さんに同級生だと言ったら、全然覚えていないと言われて少しショックを受けていたんです。記憶を操作されてそれ以前の経験はなかったことになっていたんですね」
「それはうちの晴海が悪いことをしたな。天鼓君すまなかった。仕方なかったんだ。あの力で誰かに迷惑をかけないためにも力の封印と記憶の消去が」
「できるだけ消された記憶は色んな人に聞いて補填しておいたんだけど」
「そんなに気にしないでください。疑問が解けてスッキリしていますから」
「ありがとう天鼓君、優しいのね。色々と気が使えてすごいわね」
「そうだ!水無瀬さんは保育園の時から晴明に興味を持っていたみたいですよ。あまりそのことを言わないので不思議だったんです。僕が晴明と仲良くしていたんで彼のことをことあるごとに熱心に聞いて来ていましたよ」
「あら、そうなの全然気が付いてなかったわ。どうして違うクラスなのに興味を持ったのかしら」
「おそらくパルの事件で興味を持ったんですよ」
「パルの事件?なんだそれは百花知っているか」
「・・・園のウサギのことかしら」
「そうです、逃げ出したウサギを晴明が見つけ出して保護したんです。その時に翌日一番喜んでしたのが水無瀬さんでした。彼女にとって晴明はヒーローだったんですよ」
「あったはね、そんなこと、そうだったの」
「くそっそんな昔からあの小僧はうちの晴海にちょっかいをかけていたのか!」
「あなた、だめよ。認めてあげなくちゃ、娘のヒーローよ」
口とは裏腹に永晴は少しにやけていたのだった。
コックピットのドアが開くとヨシュアとサマラが戻ってきた。
グシュナサフの執政官邸に封印の丘から全員帰還してきた。晴海はベッドに横たわり心配顔でのぞき込む久遠と晴明がじっと晴海の死んだような顔を見つめていた。




