■おかえり
初めて見る妖怪が五つのアーティファクトが埋め込まれた封印の祭壇の前にいた。
「お前はアスタロトなのか!」
くるりと振り返った一つ角の鬼は
「さあな、きさまらに答える必要はない。ここで一緒に死ぬんだからな」
うずくまる一つ角の鬼、明らかに異質な空気が流れるのを感じた。
「晴明、みんなを避難させないと」
「どうして、気味の悪い感じはするけど、何がどうなの」
「あいつは自爆するつもりだ。それも飛び切り酷い力で」
宝蔵院は怯えた様子であった。
「アスタロト!何をするつもりだ!馬鹿な真似をすんじゃないぞ」
「バカな真似?それはきさまのことだ。この結界ごと吹き飛ばしてやる。ふっははははっ」
アスタロトの頭上にカウントダウンの数字が晴明には見えた。
「天鼓!あと三分で何かが起こるみたいだ」
宝蔵院は晴明の手を引き地上に戻ろうとする。それに従い晴明も引っ張られるままアスタロトを残し地上に戻った。
「早く!!ここから避難してください。爆発が起こります」宝蔵院の言葉にゴジルも自分の船に乗り込んでいった。
「何か防ぐ手段はないの」その場に立ち止まる晴明に
「おそらく核爆発級の威力です。できる限り遠くへ」
「だめだよ。ほっとけないよ。封印が解けちゃうよ」
宝蔵院は杖で頭を叩きだした。あまりに強くたたき過ぎ血が流れ始めた。
「できる!出来るよ晴明」
「何どうするの」
「空間だよ。からくり兵を倒したあの技、空間を削り取り異空間に送り込むあの技だよ」
晴明親子の最大級の究極呪文だ。かつて数十キロもの距離の山をくりぬきトンネルを掘った技である。
「でも封印も削り取っちゃうけど・・・」
「今は仕方がないよ。この地底世界の生態系も変えるほどの爆発だよ。四の五の言っている暇はない、やるんだ。ぼくが標準」をするから最大級で打ち込んで」
宝蔵院は杖を大きく振るい巨大な魔法陣を描き出した。
「今だ!」
あしびきの
みねにつもりしそのここら
わがしるしをしめし
われなしちからを
空間
雷鳴が轟いたが如く地響きと共に晴明の両手から真っ黒な闇を打ちだした。
封印の丘はごっそりと切り取られた。
大爆発の危機を乗り越え地底世界の環境破壊を防いだゆえの安心感か宝蔵院は額から大量の汗と杖を打ち付けた頭部の血が混じり落ちていたが気にもせず、
「すさまじい威力ですね。晴明でもこれでこの世界を救いみんなを助けれましたね」
と晴明の方を向こうとするとタオルを掛けられ血と汗をぬぐい取られた。
「こんなに怪我して、本当に仕方ない子ね」
「えっリボマンマ!どうして逃げなかったの」
「あんたなら何とかしてくれるはずだし、誰があんたを家に送るんだい、さあ帰るよ」
軽々と宝蔵院を持ち上げて荷物のように肩に担いで船に運ぼうとすると、晴明は疲れてしゃがみ込んでいたが
「もうちょっと休ませてください。あとで追いかけます」
と言っているにもかかわらずリボソーヌは反対側の肩に晴明を担いだ。
「あんたもよくやったよ。天坊だけの手柄じゃないね。家に帰ったら飛び切り美味しいご飯を食べさせてやるよ」
お腹が鳴る音が聞こえた。




