■分解
玉座に座る晴海は晴明の声を聴き姿を見ても何も反応しようともしない。
「ハートの女王リリスさま、怪しいものが侵入しましたいかがいたしましょう」
ダイヤの兵士が報告すると「何か貢物を持ってきたか」
晴明が返答に困っていると袖を引っ張るものがいた。
「鳴釜君、ついてきたんだ!そうだ、この鳴釜が貢物ですお姫様」
鳴釜を見れば何か思い出すかもしれないと差し出してみた。鳴釜はころころと転がり晴海のそばまで行くと大きく警告音を鳴らし始めた。耳を塞ぐ兵士たちだが晴海には聞こえていないかのように平然としている。周りに兵士がいなくなったところで晴明が近づいて直接話しかけた。
「晴海、帰ろう」手をつかんで引っ張るとそれに従って晴明についてくるではないか。
二人の行く手をトランプの兵士たちが遮るがかまわずに突っ切っていった。かき消えるように兵士がいなくなる辺りは真っ白の空間に変化した。一瞬その光に目を閉じる晴明、にぎったはずの晴海の手の感覚がない。
「晴海どこ?」あたりを見回すと晴明の記憶にある晴海よりも小さな女の子がいた。
「いやだ!こないで!知らない人」おびえる子供の晴海
「心配いらないよ。思い出して晴海、晴明だよ」
少女は金色に輝き始めると晴明の体が分解していく、晴明もそれに呼応するように輝き始めた。晴海の体から黒い霧のようなものが染み出してきたが、二人の光を浴び消滅していった。すると晴海は元の姿に戻り叫び出した。
「晴明!」
晴明はにこりと笑うと分解してしまった。
「今です!石化を解いてください」今度は宝蔵院の叫び声だ。
久遠をつかんでいた晴明が目を覚まし飛び退いた。
カグヤが呪文を唱えだすと久遠の石化がまず解けた。久遠はばたりと倒れ意識をなくして地面に倒れ込んだ。岩石も徐々に小さくなり人の形になったのだが、様子がおかしい。
「晴海が消えてしまいそうだ!カグヤがんばって」
「私に任せるがいい」ハクトダルヌが石化状態の晴海を抱きしめた。
「要素が足りない、このままでは元通りに復元ができない」ハクトダルヌがそう言うとカグヤが手を伸ばす。
「ハクトダルヌ、水無瀬さんに要素を分けてあげてください」
宝蔵院の考えは修羅猿のようにすることであったが、カグヤの姿が半透明になっていく。
「カグヤ!」
「晴明、サヨナラだ」
ハクトダルヌが抱きしめている晴海の中へ消えていった。




