■久遠の思い
「でも一つ不確定な要素が不安なんです」
「天鼓、ほかに何か問題でもあるの」
宝蔵院は晴明に近づくと杖で頭をぽくぽくと叩きながら
「罠の可能性です。ここへ来る途中にアスタロトの無策ともいえる奇襲がありましたよね。何らかの時間稼ぎとあの時は思いましたが、ここにきて晴海の発見です」
「つまり晴海も罠の一部ということどんな役割があるの」
「多分この場所に侵入をすること、ベルゼブブの何かがまだここには残っているんですよ。その回収のため晴海を送り込んだといったところでしょうか」
「それは無理があるよ。天鼓君、僕は彼女があの見張り場所にとどまったのはアスタロトに付いていけなかったからだと思うよ」
「確かにゴジルの話では捕まえたときは衰弱した状態だったと言ってましたね。ちょっと待ってください」
宝蔵院はまた杖で頭を叩きだした。
「だめだ・・久遠さんの勘を信じて見ます。水無瀬さんを何とかしないといけません。彼女の安全が最優先事項ですね」
「よし決まった!カグヤ頼むよ」
「久遠、その石に両手を載せて」
カグヤは小さな声で呪文を唱え始めると久遠の手の先から徐々に石化が始めった。
「こ、この感じあの時と同じ」
「晴明、久遠にしがみついて」
その声にあわてて久遠の背中にしがみつくとカグヤが平手で晴明の背中を叩いた。電撃ののような衝撃と共に晴明の意識が飛んでいった。
この感じ・・・あの時の・・・・晴明は自分の体が闇の中に落ちていくのを感じていた。それは平安時代、青龍の魂が封印された玉を触れたときのようであった。あの時はカルヤシャの闇に触れ意識が飛んでしまったが今回は自我を保ったままであった。
「ここが晴海の心の中・・・・何も見えない、探さないと・・・」
久遠の体がどんどんと石化していく、腕から体へとゆっくりと
「あ!聞こえる聞こえる晴明君の声が・・・晴海!こっちだ晴明が向かっているぞ。気が付かないのか!」
久遠の目には何かが見えているようだ。いつの間にか久遠の頭部は石と化していた。久遠にしがみついている晴明は目を見開いているが何も見えていないようであった。
「カグヤ話しかけても大丈夫ですか、伺いたいことがあるんですが」宝蔵院は二人をじっと見ているカグヤに話しかけた。返事はないが宝蔵院は
「晴明に助言を与えることはできますか」
「声をかけて見ればいい、彼ならその声を拾えるだろう」
宝蔵院はいつの間に作り出したのか計測機器のようなものを岩石に貼り付けてパソコンとにらめっこしていた。




