■謎の少女
晴明たちがグシュナサフへ向かう途中にアスタロトに襲撃をされた日、シャア・ゴジルは修羅猿が水無瀬晴海の錫杖を見つけた場所にいた。数日前のゴダールの丘への襲撃と仙術を極めたゴジルにはここ数日アガルタの世界になにか尋常ではない異変が生じていると感じその確認のためホルミスダスのリボソームを訪ねるべく数名の乗員を載せて飛行船の舵を握っていた。
「!ん?あれはなんだ。こんなところにはだれも住んでいないはずだが」進路を外れた遥か彼方の崖の上で偶然何かが光ったのを見逃さなかった。飛行船を旋回させるとワイバーンが数匹崖の上で休憩しているようであったが突然の飛行船の接近に色めき立ってあわてて武器を手に取り始めた。
「舵を代われ、お前たちは船で待機だ」と命令すると外部ハッチを開き飛び降りていった。
大空を滑走するようにゴジルは一直線で崖目掛けて突っ込んでいった。地面にそのまま激突でもしてしまいそうな勢いであったが降妖宝杖をくるりくるりと回すとぴたりと止まりあたかもそこに地面があるかのように歩いてワイバーンたちに近づいていく、仙術の空歩を使っていた。
その姿に驚いたのは敵のワイバーンであった。ゴジルの形相もすさまじく恐れ逃げ出していったのであった。バサバサと羽ばたき散り散りばらばらに逃げ出してしまったのであった。
「なんだ意気地のないやつらだな。数日前のゴダールへの襲撃犯の仲間のようであったな。?!ほう、少しは骨のあるやつもいたようだな」
降妖宝杖を向けた相手は錫杖を持った女であった。
「女?人族の子供か、やけに痩せてボロボロじゃないか・・・どこから来たんだ。ふらふらしているじゃないか。おとなしく降参したほうが賢明だぞ。さあ」
ゴジルのその言葉に耳も貸さずに突っ込んできたが、みぞおちを強く突かれ気を失い倒れてしまった。
「さてはて、どうしたものだか。連れ帰って尋問するか」口笛をピイと鳴らすと飛行船から綱が降りて来た。小脇に少女を抱えると飛行船に戻って行った。
「引き返すぞ。やはり何かが起きている」ゴジルはグシュナサフに戻って行った。
それが晴明たちが来るまでの出来事であり晴明たちが次の日現れたことによりゴジルは確かめるべく襲撃を行ったのであった。
晴明は敵の女という言葉に晴海の姿を重ねた。
「早く会わせてください」
「今祠の結界を解く故、しばし待たれ」真言を唱え始めるゴジル、扉が開かれ下り坂が見えるとオオガミは
「俺とヤーシャはここで見張っている。お前たちだけで行くがいい」
オオガミとヤーシャを残し晴明たちはゴジルについて行くのであった。




