■漱石枕流
グシュナサフに向かうリボソームの飛行船ではオオガミとヤーシャと宝蔵院がひざを突き合わせて何やら深刻な話をしていた。そうヤーシャの凶暴性の顕著な表面化のことだ。
「そうか天鼓も感じていたか、原因はやはり百花の血か」
ヤーシャから聞いた原因らしきことを伝えた。
「これは仮説ですが彼女の血液は他人の肉体も超再生を行います。この作用によって記憶、現世以外の転生した記憶さえも復元されたのかもしれません。僕とヤーシャには前世の記憶がおぼろげながらあります。僕はオオガミさん、ヤーシャはタマモママを見ると恐怖感が込み上げるんです。晴明も何か知っているようですがあえて聞かないほうが良い関係を保てていると思っています」
オオガミはその話を聞いてもあえて何食わぬ顔をしていた。
「天よ、それは治療というか改善は可能なのか」宝蔵院の手を握りヤーシャが願うように尋ねた。
「残念ながら治療法は見つかっていません。精神的な問題ですから自分を信じることで少しは改善するかと」
二人のにぎった手の上からオオガミも手を合わせ
「俺が保証する。二人の心は俺たちと一緒だ、必ず克服できるヤーシャ、テンコ」
前に座っているカグヤが振り向き
「少し試してみたいことがある。目的地に着いたらもう少し話をさせて」
「カグヤさんヤーシャの悩みをなんとかお願いします」
少し明るい希望が見えたようで宝蔵院はカグヤに礼を言った。
「よかったね天坊お姉さんお悩みがなんとかなりそうでもうすぐグシュナサフだ。早く着いたね、高度を少し下げるよ」
飛行船ポートに着いた晴明たちはゴジルについていろいろと話していた。
「修羅さんはゴジルさんが敵ではないと最初からわかっていたんでしょ。ちゃんと言っといてくれなきゃ困りますよ。まるで楽しんでいるみたいでしたよ」久遠はこういった勝手な行動にはうるさい
「悪いな、俺も確証があったわけじゃないんだ。ゴジルの変身した姿は見たことなかったものでな」
「あの石をご神体と言ってましたよね、ゴジルさんはもしかしてアルテミス教徒ではないんですか」
「アルテミス教の漱石枕流派ではもの言う石こそこの世界に調和をもたらす絶対神でありわれらが頼るもの」
アルテミス教にいろんな宗派があるとは晴明は驚いた。
「へえ~そうなんですね」
感心する晴明に久遠は
「晴明君、ゴジルさんにからかわれているんだよ。漱石枕流ていうのは屁理屈を並べて言い逃れをすることだよ。夏目漱石のペンネームの由来だよ」
どうして異世界のしかも地底世界にいるくせにそんなことわざを知っているのかと晴明は思ったが
「そうかゴジルさんは魔族転生者なんですか」
この地底世界アガルタに来た時にダルトンのひい爺さんが魔族転生者で過去の記憶を持っていた話を思い出した。
「久太郎とか申したなよく『晋書』孫楚伝のことわざを知っていたな。やはり異世界から来た人間であったか」
久遠の小ネタ知識に助けられた晴明であった。
「いやそんなく晋書』なんて知りませんがゴジルさんの知っているもの言う石について知っていることをこれからやってくる天鼓君に話してください、お願いします」
「そんなこと聞いてどうするんだ」
「教団のアスタロトたちの弱点を知るためなんです」
ゴジルは頷いた。




