■シャア和尚
突然の修羅猿の仲裁に晴明は戸惑った。なぜ今突然に気ままな行動の意味は?敵の大河童も乱入者を怪訝な目でじろじろと見つめて黙っていたが、やをら口を開いて晴明らに質問をした。
「おのれらはやつらの回し者ではないのか、正直に言うて話せ」剣先を晴明に向ける。
驚いたことに河童たちは教団の者たちではなかったのである。
「君たちこそ教団の妖怪じゃないのか」晴明は大きな声で答えた。
久遠もやっとそこへたどり着いた。
「敵ではないんですって修羅さんこれはどういうことか説明してください。あなたが嗾けたんでしょ」この状況を把握できているのは修羅猿しかいないように思えて尋ねた。久遠の声が聞こえないかのように静かに河童に語り掛けた。
「お前さん、名を何と言うんだ。わしは修羅猿、そしてこいつらは晴明と久太郎、アスタロトたちと仇なすものだ」
修羅猿の顔を見て
「シャア・ゴジルと申す。そうか勘違いであったか、悪いことをした。この通り」
と頭を下げた。
「ゴジルと名のるのかやはりな。もの言う石の守護者たちだな」
晴明も久遠も驚いた。そんな守護者がいたとは聞いていなかった。
「おぬし何故その名を知っている。わが宗派しか知り得ぬご神体の名を」
手に持つ大剣をくるりと回すと半月刃の付いた杖と化し大河童はみるみる小さくなり法衣をまとった青黒い顔の僧侶姿へと変化すると、安心したのか久遠は近づいて修羅猿の肩に手をかけて
「この修羅猿さんももの言う石で三位一体の守護者みたいなものなになっちゃんているですよ。安心してください、僕たちは敵なんかじゃありません」
強い口調でそう言うと
「たしかにその姿、聖域のアッカド古代神殿の守護像ではないか」
シャア・ゴジルは手を合わせ拝んだ。そこで晴明は思い出したように
「あーごめんなさい、ゴジルさんの仲間を傷つけてしまいました」
晴明は謝っていたが
「心配ない、ほれ」
シャア・ゴジルは降妖宝杖、半月刃の付いた杖であるがそれを数度打ち鳴らすと倒れていた河童たちは髑髏のみとなり手元に集まってくると数珠となり、首に掛けたのであった。
「ほれこの通り、何の問題もない気にするではない」
「すごい術ですね。分身を作り出せるのですか」
「仙術の秘法である。この髑髏はうち滅ぼしたアスタロトの手下じゃ」
髑髏数珠を撫でて言った。
「まもなくハクトダルヌ様もここへいらっしゃる、詳しいことは仲間が来てからお伺いしたい、よろしいかな」
修羅猿をシャア・ゴジルに告げると飛行船の発着場へ向かった。




