■晴海の錫杖
「その錫杖だけなの晴海はいなかったの」
晴明は錫杖を握って修羅猿に尋ねるが返事はノーであった。
「晴海様はどうしていらっしゃるんだろう。天鼓君、この錫杖から何かわからないかい」
さすが久遠は刑事である遺留品から何か手掛かりを見つけようとしていた。宝蔵院は元々、久遠のいる部署を協力する科捜研の職員であった。
「この錫杖は普通の機器では分析なんかできないと思います・・・そうだバーバレラ、この錫杖を握って見て」
晴明はバーバレラに錫杖を渡すと
「どうしてバビィーなの」
「この錫杖の作ったのはサテュロスと言うバーバレラと同種の魔物です。おそらくメダル精製と同じ能力を使って作り上げた魔道具と思われます。つまり彼女には何かを読み取れると思うんです。何か感じますかバーバレラ」
ぎゅっと錫杖を握るバーバレラ、目を閉じ額にしわを寄せるほど集中している。
「何かわかりますか、お願いします」
心痛の表情で久遠は祈っているかのように両手を合わせている。
「がんばって」
「晴明、声を掛けないで黙って見守ってください。残留思念を探らせているんです」
バーバレラの額から汗が流れ落ちる。苦悶の表情を浮かべうずくまると嗚咽し始めた。ぼろぼろと涙を流すと
「助けて・・・・ハルアキ・・・」
そう言うと錫杖をパタリと離した。
「これ以上はつらくて心が壊れそうで持っていられない。怖いわ彼女を助けてあげてお願い」
晴明と久遠も苦渋の表情でこぶしを握り締めた。
「くそ! くそ!くそ!」
久遠は地面をこぶしで叩きつけている。そのこぶしに血がにじんでいるがさらに叩きつけようとする。晴明が久遠の腕を掴んで止めた。
「僕だって許せないさ!ふがいない自分が恨めしいよ」
晴明の手を握り締める久遠
「久遠さん、僕だって僕だって・・・」晴明は泣き続けている。
「男が二人で泣いているじゃないよ。その子を助け出して泣くのが筋だろうよ。しっかりしな」
リボソームは二人を抱きしめていた。
「二人とも泣いている暇はないぞ。オオガミとヤーシャの心配をしろよ。ほら」
と修羅猿が言った途端、ヨモツは目を閉じた。あたりは闇へと沈んだ。




