■雷撃一番
敵に向かう前に晴明は飛行船のキャビンに近づくと
「敵が近づいてくるみたいなんだ。このままここに待機してね。退治してくるから」と伝え再び飛び立とうとすると、よろよろとする宝蔵院が彼を止めて無言で通信機を渡した。
「ありがとう天鼓、援護お願いするね」と言うと敵に向かって行った。
「教団のやつらは地上へ戻ったんじゃないのか、どう思う天鼓」オオガミは船酔いの宝蔵院に助言を求めた。
「僕たちが必ず訪れる場所は封印の丘です。そこで待ち伏せがあってもおかしくありません。これまでも妨害してきたように」
と言うとこの地で会得したスキル<錬金>を使い望遠鏡とモニターを作り出すとリボソームの船に勝手に設置し始めた。
「この子は何なんだい、私の船に変な手を入れるんじゃないよ」
「まあまあ、リボソームさん、彼のやっていることをしばらく見ていてもらえませんか。悪いことはいいませんから信じてやってくださいよ」
久遠は大切な自分の船を勝手に改造されているリボソームをなだめていた。宝蔵院なら必ず今、役に立つことをしていると信じていたからである。設置されたモニターには晴明が映し出されていた。
「これで晴明がどんな敵と遭遇したかわかります。ここを指令室にして彼に指示を出せます。お出ましになったようですよ。晴明が止まりました」
宝蔵院は天ミニをパソコンに戻してキーボードを叩きだすとモニターに別角度からの晴明が映し出された。
「ええ、これはどういうことですか、どうしてこんな角度が見えるんです?」久遠の言うこともまっとうなことである。
「あらかじめ開発していた虫型の監視カメラですよ。ハルアキに受信機を渡しましたよね。あれには四個の監視カメラがついているんです。今オンラインにしました」
分割して画面に映し出される晴明の前に何かがこちらに飛んでくるのが見えた。
「あの黒いワイバーンは!」
真っ黒なひときわ大きなワイバーン、アスタロトを中心に据え十数体の小型のワイバーンが晴明に迫っていた。
「さてどうしたものかな得意の雷系の呪文はこの世界では使えないし・・・」
作戦を考える晴明に
「ハルアキ、敵を倒す威力は要らないから雷系の呪文を準備してください」
受信機から声がする。晴明は宝蔵院の作戦がまだ分かりかねていたが、この後、よくそんなところを見ていたなと感心した。
アスタロトはホバリングしてその場にとどまると小型のワイバーンを先行させて晴明に向かわせた。その体には何かが縛り付けられていた。
「ワイバーンがあまり近くになる前に雷撃を広範囲に放ってください」
「とにかく分かったよ」
あまびこの
おとをまゐらすわりなしの
さがなしものにさながらうす
雷撃
雷撃が火花を散らすようにバチバチとワイバーンを伝って行くとなぜか爆発が連鎖的に起こりワイバーンは次々と落下してい行った。
「簡易のミサイルの発射装置を巻き付けていたんですよ。雷管を刺激してあげればこの有様です」
すました顔の宝蔵院はまだモニターを睨んだままであった。




