■リボソームの船
翌朝、リボソームマンマの朝食を食べるとダルトンは自分の飛行船でラルヴァンダードへ戻って行った。
「さあ次は私の船でグシュナサフへ送ってやるよ。ついてきな」
家を出て案内された格納庫には小ぶりだがスピード優先の飛行船が収納されていた。
「これもしかしたら八人乗りですか」久遠は心配そうにワンボックスカーくらいの乗船スペースの座席を数えると念のため聞いた。運転手を入れての八人乗りだ。オオガミたち一行はハクトダルヌと修羅猿を加えたため今では九人になってしまっていた。
「問題ないですよ久遠さん、僕はバビィーとピコーナで飛んでいきますから心配しないでください。バビィー、こっちへ、それじゃお先に」
「早く追いついてね」
とバーバレラは言うと晴明の背中に抱き着いてピコーナで飛んで行ってしまった。
バーバレラの一言にムッとしたリボソームは「こうしちゃいられないね。行くよあんたたち、ロープを引っ張って船を表に出しな」
オオガミたちは太いロープを引き外に船を出す。
「あんたたち早く乗り込みな。飛ぶよ」
リボソームはイグニッションキーを回す。爆音を立ててエンジンが唸りだした。機体がぶるぶると震えているかなりの高出力エンジンだ。
「これは面白い、ジェットエンジンを搭載しているんですね興味深い」
宝蔵院は船内を歩き回りあちらこちらを観察していた。
「あんた、うろうろすると危ないよ席についてシートベルトをしなよ。舌を噛むよ」
リボソームに叱られしぶしぶ席に着くと、スロットルを回すと急加速した。座席に貼りつく加速を受けた宝蔵院は舌をかまないように口をぎゅっと閉じた。
「すごいスピードですね、何時間くらいでグシュナサフに到着するんですか」
時計を見ながら久遠は大声で尋ねた。
「さて今日は記録に挑戦してみるかね。八人乗って今までの記録は2時間55分さ、ほら先に行った坊やの鳥が見えてきたよ」
晴明にあっという間に追いついてしまった。それに気が付き振り向く晴明は
「うあ!すごい、追いつかれてしまう。ピコーナ!スピードアップだ」
「ぴこ!」
競争が始まった。行く手は平地だが何本もの奇岩が地面から突き出て行方を遮っていた。一進一退抜きつ抜かれつ荒っぽい運転のリボソーム、たまらないのは晴明と一緒に乗るバーバレラだあまりのスピードに目を回して気絶の一歩手前だ。
「は・は・はるあき・・・・・」
「なに?バビィー」
晴明が彼女を見ると死にそうな顔、ゾンビなので死にはしないのだが、
「吐きそうなの・・・と、とめて」
「だめだピコ!!」
これは大変である。飛行船に手ぶりで合図してスピードを落として地上に降りて行った。
「あれ?晴明君どうしたんだろう」
「久遠さん、おそらくバーバレラがあまりのスピードに参ってしまったんでしょう・・・・うっぷ」
そう言う宝蔵院も手を口に当てて真っ青な顔をしていた。
「ちょっとリボソームさん、天鼓君が気分が悪そうなんです。スピードを落としてください」
「なんだいせっかく調子が出たところなのによ!しかたないね」
エンジンのスイッチを切り惰性飛行へと切り替えたのだった。
晴明はバーバレラの背中をさすっていた。
「危機一髪ピコ!私の上じゃなくてよかったピコ」
ピコーナは胸をなでおろしそのさまを眺めていた。
「ごめんねつい調子に乗っちゃたよ。さあ水でも飲んで落ち着いて」
コップになみなみと水を注いで渡すとグビグビと飲み干した。
「まさかこんな早いものだとは・・・あんたもすごいね」
ピコーナに向かってそう言った。
「へへん、もちろんだピコ、!?ちち何か敵意が来るよ」
「ああ、気が付いてるよ。バビィーここで待っていて」
ピコーナに飛び乗ると猛スピードでその脅威の対象の方へ飛んでいった。




