■ハクトダルヌのガーディアン
さっそく晴明は鑑定スキルで天井から迫る根っこを調べる。
「この神殿に寄生するムコドの根っこみたいです。それにそのあたりに睡眠ガスが立ち込めているのでちょっと待ってください」
晴明は呪文を詠唱しだした。
あかねさしひのみたま
あくがるみたま
まもりけれ
浄化
輝く霧でガスを無効化すると久遠の元に駆け付け上を向くと
ちはやぶるかみのちぎりしほむろあれ
おほけなしものをしたたむれ
火柱
業火はゆっくり迫りくる根をすべて焼き払うとすぐに眠っている宝蔵院たちに解毒の唄を歌い始めた。
治癒賜る精霊のその御心で救いたまへ解毒の技を沐浴
治療を終わらせ仲間たちの具合を確かめるが、晴明は何か違和感を覚えながらの作業であった。
「あっ」
小さな声を発し違和感の主を見つめた。それは声に出していけないことであった。オオガミが眠らされていたことにだ。
満月に程遠い月齢であるがこんな簡単な毒や罠に彼が引っかかるわけはないのだ。明らかに何か異変がオオガミに振りかかっているのだ。
「ハルアキ助かった。すっかり油断していた」
オオガミは頭を掻きながら何食わぬ顔で言った。
「晴明君、戻ってきたんだね。此処に入る前にあのムコドの大木は気になっていたんです。まさか睡眠作用のある毒を持っているとはね。この神殿に巣食うネズミや蝙蝠なんかを餌にしていたんだろうね」
「天鼓様ご無事で何よりです」
「バーバレラ、晴明を連れてきてくれてありがとう」
「いえいえ、ご命令に従ったままです。それより大事なことを忘れておりも申し訳ありません」
「?なんだ」
「この神殿の罠を無効化する方法をお伝え忘れておりました。もう解除しています。ご安心ください」
「問題ないよ。誰にでも度忘れすることもあるさ、それより先を急ごう」
まだ眠気の残るからだでふらふらとしながら進もうとする宝蔵院
「だめだ天、も少し休め」
ヤーシャは首根っこを掴んで引き戻した。
むくれ顔の宝蔵院だがヤーシャには逆らわずにそばにちょこんと座っていた。
「バービィ、もう忘れていることはない?ゆっくり考えてみて」
晴念を押すようにこの先の道中の安全を確認したがバーバレラは頭をひねっている。その表情に何かもっと大事なことを忘れていると晴明は疑い始めた。
「あっ!思い出した。門番が二体いるの、晴明の持っているオーディンの馬が二体あったのここに」
「それ本当、二体もスペアが手に入るかもしれない」
「ハクトダルヌが吸収した二体の大猿をその二体に注入してガードを命じたの」
「もしかしてその止め方も忘れているんじゃない」
ペロッと舌を出したバーバレラは
「ごめんね。すっかり忘れていて思い出せない」
ある程度戦いは覚悟していた晴明だが、その勝利にはかなりの報酬が出ることとなった。




