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■アッカド古代神殿

 グシュナサフの執政官(コンスル)はバルログ種の真っ黒な鬼であった。水牛ののような立派な角を持ち目は真っ赤に燃えるように輝いて恐ろしげな面体(めんてい)ではあるが知的な眼差しがそれを打ち消している。ログスタと言う名の男で家族とともにこの地に入植してきた鍛冶屋であった。

 バーバレラを使いに出してこの家に呼んできたのだった。

「急用とは何なんだガストン、新しい飛行船の整備に忙しいんだがな」

 ログスタはアガルタの三基目の飛行船の製造を担当していたのだ。

「ゴダールの丘の地下で大変な拾い物をしてしまったんだ。これを見てくれ」

 浴槽へとログスタを招き入れてハクトダルヌを指さした。

「まだ少しくらいはしゃべれないか」

 ログスタは誰も入っていない浴槽に問いかける姿を見て不思議な顔をした。

 金色をした物体が柔らかく波を打つと大猿ガルの顔が浮かんだ。

「これはなんだ、あの大猿たちのような顔をしているが」

 彼も大猿の顔の識別はできていないようだ。

「私はハクトダルヌ、もの言う石(ピエトラパラーラ)と呼ばれている。アッカドまで運んでくれないか」

 ぎょっとしたログスタ、彼はホルミスダスの一枚岩(モノリス)に触れた男であの街のことをよく知っている。そこにはアッカドと呼ばれた古代神殿があるのだ。

「アッカドだと」

 バグログは魔王から彼を匿ってくれと手短に説明を加え、

「とりあえず彼の容器を作ってくれないか、これ以上被害者を出さないためにも」

 大猿たちの様に不用意に触れて浸食されないように隠したほうが良いと思ったのだろう。

「それはすぐにできる、ホルミスダスのアッカド古代神殿は罠の仕掛けだらけだぞ。あそこに安置すれば簡単にはたどり着けまいがどうやって中に入る」

「ありがとう、入り方は私が案内しよう」

 ログスタとバグログは数日間、容器づくりと飛行船の準備に費やされた。そしてハクトダルヌはホルミスダスのアッカド古代神殿に隠されたのだった。


「なるほどそんなことがあったんだ。もう天鼓君はアッカドに入っているよね」

 晴明はバーバレラに言った。

「そうさな、ハクトダルヌの安置には私も同行したからね。詳しく罠のことは説明しておいたから天鼓様なら簡単にたどり着いているだろうさ。それより早く食べて眠りな」

 バーバレラは壁のメダルを眺め出した。昔話を晴明にしたことで恋人たちのことも思い出したのだろう。


 ホルミスダスでは宝蔵院が晴明の到着を待ちわびていたのだった。

「オオガミさん、僕たちだけで神殿に入るのはだめなんですか」

「念には念をだ晴明が来てからにするんだ」

「そうだ天よ。好奇心が押さえられないようだが今は我慢だ」

 そんな言葉を聞かずにその夜、宝蔵院は勝手に一人で神殿に入っていったのであった。

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