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◆龍と魔族

「よしこれでメダルはできた。ベールに着いた後にヘイ・オン・ワイのアジトに設置するだけだ」

 メダルには貴具から譲り受けた百々目鬼(どどめき)の目の呪符に宝蔵院特製の通信チップも付与されているので通信機器に憑依させれば自動的にこちらの通信機に転送させる来ことが可能なのだ。ベールにはあと二十時間後の早朝に到着することとなる。

 打ち合わせを終え各自コンパートメントに戻って行った。1時間後には昼食の用意ができるとのことであった。


「さっき何か思い出したような顔をしたな百花、話してくれるか」

 自室に戻った永晴は打ち合わせの途中、妻の少しの表情の変化に気が付いたのであった。

「ええ、ヘイ・オン・ワイと教団の関係について聞かれたときね。昔極秘任務で身分を偽ってミュージシャンをして活動していたの、その時、敵につかまったことがあったのよ」

「それをリークしたのがヘイ・オン・ワイじゃないかと思ったのか」

「いえ、その時はまったく疑うこともなかったわ。ただ何か引っかかるのよ。教団を追い詰めるための情報操作が行われたんじゃないかって」

「よくわからないが、そんな昔からヘイ・オン・ワイには謎があったということだな」

「何らかの意図をもって情報を操作しているんじゃないかしら」

「確証の無いことは黙っておいた方がいいだろうな百花」

「そうね、今は晴海を助け出すことだけに私たちは集中しましょう」


「どうだ(すぐる)、おぬしの見立ては」

 こちらは師弟コンビのコンパートメントだ。さっきの打ち合わせの中で何かを探っていたようである。

「俺はかなり昔からあのヘイ・オン・ワイという組織は何かあると思うな」

「さすが疑り深さは筋金入りのようであるな、拙者もあの百花殿の表情からそう読み取ったわ」

「我々の情報漏洩問題以外にもあの組織は探る必要がありそうですね」

「うむ、次のミッションが終わったら(たける)とともに探ってみようか」

 御堂はシャカシャカと茶筅(ちゃせん)で抹茶を点て貴具に渡した。貴具は一口で飲み干すと苦虫を噛み潰したような顔で外の風景を眺めていた。


「ちょっと抱き着いてごそごそするのをやめてくれないかサマラ、考え事したいんだけど」

「いいじゃないこのくらい、ヨシュアは私のこと嫌いなの」

「もう、そんなわけないじゃないか、でも今は少し我慢してくれよ。そうだサマラはこんな昔ばなし聞いたことないかい」

「え、どんな?」

「500年前の月の統一の時代の話だよ。われら龍の一族が解き放たれ魔族はそれを恐れ逃げ回り困り果てたそうだ。魔族は神官に助けをもとめ安息の地を授かった」

「そんな昔話は私は教えてもらってないわ、まるでアガルタのことを言っているみたいね」

「興味深い話ですね」

「うわ、天ミニ!ついてきていたんだね。驚いた」

「日本の民話、御伽草紙にそんな話がありますよ。猫の草紙と言う、ふふふ」

「どんなお話しサマラとヨシュアにも聞かせて天ミニちゃん」

「いいでしょう」

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