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■大気都比売神オオゲツヒメ

 剣を構えた晴明は耳を澄ましていた。霞が立ち込め視界がクリアではない。突然の物音、またしても小型肉食恐竜のヴェロキラプトルだ。

「戻れピコーナ!」

 ピコーナをメダルに戻すと倒れたオーディンの馬をまたいで剣を振るいヴェロキラプトルを断ち切っていく。数体を倒すとピタリと敵は襲ってこなくなった。

「えっ?もう終わり?火鼠山(かそざん)のみたいにスタンピートでも起こしていっぱい出てくると思たったのに」


「すまなかった、害する気配はないようだ。こちらへ来るがいいだろうついて来い」

 晴明は驚いた。何の気配もなく後方から声がしたのだ。

「!誰なの」

 ふりむいた晴明は驚いた。オーディンの馬が一人歩いてくるではないか。

「なにも憑依させていないのにどうして」

 戸惑う晴明をオーディンの馬は追い越していく、そして

「われは世界樹(ユグドラシル)なり(なんじ)を招き入れよう」

「どうなっているのどうして僕のオーディンの馬を操れちゃうわけ」

「この体はわが一部さして不思議はなかろう」

 そうオーディンの馬はユグドラシルの木から作られていた。数分ほどで直径10メートルはあろうかという大樹の幹の前に立っていた。オーディンの馬は晴明に向かいゆっくりと座った。

「晴明と言うのか・・・・うーむベルゼブブを追ってここまで来たのか」

 晴明は何も答えていないにもかかわらず心でも読まれたのであろうか、すべてを把握されているようだ。

世界樹(ユグドラシル)さん、ベルゼブブは何処にいるんですか」

 一番知りたいことをすぐに聞いてみた。

「奴はこの世界にはおらん、抜け殻のみがあるだけだ」

 晴明は愕然とした。せっかく伝承を信じてこの地底世界までやって来たことが無意味だったとは

「そんな、封印は解けてしまったということですか。五つのアーティファクトはもう無意味なんですか」

「封印は解けてはおらん、持ち出された魂は依然封印はされたままだ」

「残りのアーティファクトはどうすれば手に入るんですか」

 晴明が問うと上から豆のさやが落ちてきた。

「この豆は我に共生するオオゲツの豆なる」

 さやが割れると五粒の豆がなっていた。

「これをどうすればいいんです」

「グシュナサフの封印の丘にあるアーティファクトの実よりこのオオゲツの豆に力を転移するのだ」

 アガルタの第三の街であるグシュナサフにベルゼブブは封印されていたようだ。

「そんなことでいいんですか。でももう二個集めているので余っちゃいますけど」

 律儀な性格だ、黙ってもらえばいいのにそれが晴明なのであろう

「その豆は食すこともできる。生命力を回復させることができる」

「いいことを教えてくれてありがとうございます。もう一つだけ聞きたいことがあるんですけど」

もの言う石(ピエトラパラーラ)であろう。それもグシュナサフで見つかるであろう」

 地底世界での知識を授かる晴明は

世界樹(ユグドラシル)さん、何から何まで教えていただいてありがとございます」

「地上へ戻る前にもう一度ここに参るがいい」

 オーディンの馬は抜け殻のように倒れていった。晴明はピコーナのメダルを倒れているオーディンの馬へと投入すると

「すごい情報を手に入れたぞ。早く天鼓君言知らせないと行くよ」

「ピコ!」


 ガルト鉄道の特別車両がハルト市国駅へ到着していた。ヘッドマークにドラゴニアの紋章、ノンストップの超特急列車はベールの街からやって来た。

「ヨシュア、あれが見えた」

「うん、ドーマハルト号だろう、晴明たちもいるのかな」

「そうなら文句を言ってやらなくちゃ!何も言わないで姿消しちゃうんだもん許せないよねヨシュア」

 飛行船が列車の窓から見えた二人であった。晴明たちのことが気になって仕方ないのだが列車から降りるとそのままハルト市国の神官たちに案内されるまま神殿の大広間に導かれていた。主賓席を用意されそのままアガルタとの友好条約の締結式を迎えることとなっていた。格式ばった儀式が延々と続く、長い退屈な時を過ごしたように感じたヨシュアたちは、話に聞く地下世界のことを二人であれこれと創造して話していた。

「晴明があの魔族たちが地上に導いたんだね」

「バカな子、いつも人の世話ばっかり、晴明らしいと言えばそうだけど早く晴海を助けないといけないのにね」

「でも境遇は僕たち男のドラゴノイドと同じだ」

「私たち女のドラゴノイドと入れ替わるようにここガルトを追われる形になったのね」

「なんだか他人ごとに思えないよ」

 やっと調印式が終わるとそのまま宴席が開かれようとしていた。

 次々に料理や酒が運ばれて準備が進められていたが


「サマラ、ほらあそこ」

 ヨシュアが指さす先に軽足が一人座っていた。主賓席に座らされている二人は身動きが取れない。そこで従者のジャスミンに命じて軽足をこちらに招くことにした。


「お二人ともなんだかいい感じだね。しかしえらいことが起こったもんだよ。晴明が動くところに何かが起こるってとこだ」

「何を言っているんですか、僕とサマラを置き去りにして、どういうことだか説明してください」

「あれからドラゴニア宮殿に私たちは缶詰めよ」

 まずは溜まっていたうっぷんを軽足にぶつけた。

「いやいや、晴人さんがドラゴノイドの為にはあの二人を巻込むわけにはいかないと」

「黙って出て行くなんてひどいよ。僕らの優先すべきことは晴明を手伝うことだよ。今からでも地底世界に潜りたいくらいだ」

「そうよヨシュア、二人で行きましょうか」

 しっかりと体を寄せるサマラを抱きしめながら頷いていた。

「お二人ともわがままはだめですよ」

 ジャスミンにたしなめられたが

「少しくらいはかまわないだろ、ところで軽足さんはどうしてついて行かなかったんだ」

「大きな声では言えないんだが、うちのあの子弟コンビ」

「御堂さんと貴具さんのこと」

「そうだ奴らがすごい情報をつかんでいたんだ」

「ねえねえ面白そうな話じゃないの私たちも協力させてよ。そのくらいはいいでしょジャスミン」

「仕方ないですわね。軽足さん詳しくお話しいただけますか」

「それじゃ、ここから飛行船に場所を変えよう」

 四人は周りに気づかれぬよう静かに席を離れていたのであった。

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