◆母の助けでなんとかね
白鳥は懸命に神官とパラディンたちを説得するがなかなか首を縦に振らない。晴明はとっておきの援護を呼んだ。ピコーナを戻すと父のメダルと交換した。
「久しぶりだな連絡がないから母さんと心配していたぞ」
「そんなことより何とか助けて」
「なんだよ。説明がなさすぎるぞ。ミッチーも湿気たツラして」
突然呼び出されなんのことやら分けなわからぬ父に晴明は地底世界のことをかいつまんで説明した。
「わかった、わかった、この神官たちを説得すればいいんだな。母さんと交代だ。向こうで説明するから間をおいて呼び出せよ」
父の意図がわからぬまま言うとおりに母と交代を待った。神官たちはまだスワン教皇に連絡も行かずこちらを睨んでいるが、
「晴明さま、ずっと見ておりましたがそのメダルどうなっているのですか」
バスクルが不思議なメダルの使い方について聞いてきた。
「このメダルにパーソナリティを与えてオーディンの馬の変身能力を使って具現化するんだよ。詳しい原理は父さんが考えたんでわかんないけど」
「ほう晴明さまもメダル化能力をお持ちなんですね」
晴明は思い出したバスクルと同族のサテュロスはゲームと銘打つ能力で人をメダル化して捕らえる能力者だった。バスクルも同じ能力を持っていても不思議ではない。
「違うよバスクル、メダルを作ることはできないんだよ。ベゼル教が巷にばらまいているんだ。それが妖怪化したり色んな能力を持つようになっているんだ」
「そうですかアガルタでは通貨として使われているんですよ。私のような一族が能力で鋳造しているんです」
教団はそのメダルを悪用しているのかもしれない。晴明は教団の妖怪メダルを取り出してバスクルに見せた。
「確かに私が作るメダルと同じですね。こんな使い方初めて見ました」
もう一つ晴明は思い出してバスクルに聞く
「もしかしゲームを持ち掛ければ相手の能力を封じ込めることができるんじゃない」
平安時代にサテュロスにしてやられたことだった。
「メダルジャッジのことですね。なかなかその能力を使いこなせるものはいませんが少しなら私も使えますよ」
「結構レアな能力なんだね!そうだ母さんを呼ばなきゃ」
タマモのメダルを使ったとたん抱き着かれキッスされてしまった。
「心配してたのよ。母さん泣きそうだったんだから」
すでに晴明を見て泣いていたが
「それより父さんと打ち合わせしたんだよね」
「そうそう」
神官とパラディンに近寄っていくと
「スワン教皇を呼んできなさい」
投げキスのしぐさをして手のひらをかざすタマモ、チャームの能力を使った。
「なんだかずるい感じがするけどその手で行くのか」
「晴明君、陽子さんの能力って何なんだ?」
「人の心をある程度操れる能力なんだ」
「ほー旅館でもうまく使っていたようだな。君の家の旅館はトラブルが少なかったからな」
確かにそうであった。今となっては母がうまく操作していたのだろうと思った。
「それよりこのサテュロスちゃんみたいな子が地底世界から来たってこと」
「バスクルとガストっていうんだ」
互いを紹介した。そうこうしているうちに神官たちが従者のガ―ラッドとスワン教皇と共に戻ってきた。
「晴明、何事だ。ヨモツ大迷宮を走破したと聞いてはおったが魔族を連れ帰るとは説明してもらおう」
「もう教皇ちゃん、こんなところじゃなんでしょ。神殿に招待してあげてよ」
タマモは教皇の腕を引いて迷宮の入り口から上の階へと引っ張っていった。あたふたとパラディンたちも追いかけて来た。応接室へと通された晴明たち、晴明は地下世界アガルタの説明をはじめその生活を隠すことなく話し始めた。
「話はよく分かった。しかしこの国が魔族と共に立ち上げられたとはにわかに信じられない」
バスクルはごそごそと首に掛けられていたものをスワン教皇の前に置いた。
「このロザリオはかつての教皇スミエル三世よりいただいたものです」
それを見たスワンはガ―ラッドに命じて古い記録を持ってこさせた。
本を開くとそのロザリオと同じものが描かれていた。地下世界の開拓を讃えると注釈には聖バスクルに送ると書かれている。スワン教皇は
「てっきり聖人は人間だとばかり思っていた。しかしこれは本物のロザリオだ。バスクル殿遠慮せずここに滞在していただければ結構である。我々はこれから会議を行うしばし待たれよ」
スワン教皇は退席するとガ―ラッドは
「お聞きになられた通りである。アガルタ親善使節団を歓迎いたします」
深々と礼をして客間に案内していったのであった。




