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■アガルタの自然

 パーティの話はオオガミから却下されてタウロの出番はなくなってしまったが、その代わりこの国アガルタのことを執政官(コンスル)のダルトンから店の料理を振る舞われながらいろいろと教えてもらった。ラルヴァンダードは農業の街、ホルミスダスは商業の街、そして三つ目の街グシュナサフは工業の街とレクチャーを受けた。

 その出された料理の腕前は相当なものであったが、驚いたのは料理の食材だ。どれもこれも地上のそれと同じであった。アガルタはヨモツの太陽によって豊穣な農地として最適であった。宝蔵院の分析によると生育に必要な水分は地下から自然と湧き出してくる。それは雲として雨になる前に天井に吸い込みそれが流れ落ちてくるからだと雨を必要としない完全循環の仕組みを解明した。

「ダルトンさん、この肉はギアーレですよね。狩人が狩ってくるんですか」

「いや、この街から数キロのところに大きな牧場があって他にも鶏や豚などが飼育されている。すべては需要を調べ計画的に生産されている」

「すごいですね。バスクルからは人口は約十万だと聞いてますがそれは」

 宝蔵院は知れることはすべて知っておいた方がいいと考え質問を続ける。

「そんなものだろう戸籍はその魔道具の石版に記録され各都市で管理されている。我々は長生きで子供もめったに生まれないからそんなに管理は面倒なものじゃない」

 ダルトンは店の壁に埋め込まれたモニターを見せた。この街の情報が検索できるようになっていた。上の世界よりも優れた自治統制であった。これは外交に大きいな武器になるはずであると宝蔵院は思っていいた。

 晴明は料理を食べながらあることに気が付いた。それを確かめるべくダルトンに聞いてみた。

「ダルトンさんはどこで料理を勉強されたんですか」

「それは親父からしっかり仕込まれてこの味を出せるようになったんだぜ、ここは俺で四代目の老舗なんだぜ」

「そうですか地上のドメルと言う街にある山猫軒の料理にすごく味が似ているんですけど」

(おもて)の看板を見ていなかったのか、うちはその()()()だぞ」

「えー本当ですかは」

「うちのひい爺さんは人間だったんだ。そのドメルに住んでいて勤めていた店の名前が山猫軒だ」

「味が似ていたわけだ。その人が魔族と結婚したわけですね」

「いや魔族に転生したんだ。よほど料理に未練があったんだろう。此処にきて料理店を開いたときに人間だった頃の記憶を思い出したそうだ」

「数奇な人生を歩んだ人なんですね」

「いやそうでもないんだ。このアガルタではよくある話なんだ。魔族転生と言ってね。よほど優秀な人間だったんだろうな。この国のシステムをよりよく変革できる人材ばかりなんだ」

「興味深いですね。その魔族転生とは何らかの意思を感じますね」

 宝蔵院が言うその意思とはタカアマーラのことだろうかと晴明は思ったのだった。

 その日は宝蔵院は長い時間ダルトンと語り明かしたのであった。

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