■地上へのあこがれ
バーバレラは驚いたことにバスクルの妹であった。なんて長命な老婆であろう。
「なんとバーバレラ様の兄君でありましたか、確か伝え聞くところでは出口の番人の仕事をされていたはずですが」
執政官のダルトンは少しはバスクルについての知識があった。しかし死して何百年も放っておかれたバスクルの立場はどうであったのだろうか。まあそれほど地上へのあこがれ、出口に関しての興味は重要な案件ではなくなっていたということであろう。
「出口は今、このオオガミさまの力のよって解錠されておる。宝蔵院さまの話によればこれからは自由に移動が可能とのことだ。誰か外に出たいものを募ってはどうだダルトンよ」
とバスクルから提案を受けたダルトンではあるが、いまさら地上へと向かうものがいるのであろうかと思案して、
「そのことはおいおい考えてまいります故、今は魔王の話を聞かせてください。そんな話は聞いたことがありませぬゆえ」
「ちょっと待てよ。俺は地上に向かってみたいぞ」
晴明たちを案内してくれたガストが話しに割って入った。これには晴明たちも困ってしまった。まさかバスクルがこんなことを言いだすとは思ってもいなかったからだ、地底世界と地上世界のパイプ役を任されるかもしれないのだ。宝蔵院は
「ちょっと待ってください。私たちはこれから人探しと魔王の封印と言う大事なミッションがあるんです。地上への案内は不可能です」
「ガストさん、このミッションが終わるまで待ってもらえないですか」
晴明もアガルタの住民のために力になりたいと思ってはいるが晴海を助けることが今は一番の目的だった。
「なんてことだ。早く地上の空気が吸いたいぜ!なんとかしてくれよ」
「こらガスト無理を言うもんじゃない。困っておられるではないか、それでそのミッションはどのくらい時間がかかるものなんですか」
とんでもないことを聞かれたものだ。そんなこと今わかるわけがない。
「待ってくださいしばらく考えさせてください」
宝蔵院は解決策を探るべくミーティングを行うことにした。ダルトンから店のテーブルを借りて急遽会議の運びとなってしまった。




