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●近衛旅団

 オオガミの下で働く中隊長はすぐに決まった。ドメルでの傭兵時代に仲良くなった腕利きたち五人だ。


 アーカムスは大柄の熊族の獣人というが見た目は普通の人間だ。しかし力がけた外れに強いらしい。満月ではない時のオオガミにアームレスリングで負けないし各種の武器を使いこなしリーダ的資質も兼ね備えている。武芸者として諸国をめぐり武器狩りをしていたそうだ。まるで弁慶だ。

 アオナはアーチャーで、回復系の呪文に加え水の精霊魔法を使う無口なエルフ族の女性で情報収集能力にもたけている。ハルナと幼馴だということだ。

 キグナスは相撲取りのような見た目だが意外に器用で爆弾や毒薬、解毒薬などの調合を得意とする。そして明るそうだムードメーカー的な存在になる。長い棍棒を自在に操るほか格闘技でもその力を発揮する。

 オオミドウは魔術師だが魔法剣の使い手でもある。年齢は五人の中で一番の年長で落ち着いていて、その戦い方は俺のそれに酷似している、いろいろ聞いて学ばせてもらおう。

 最後のモモはタマモと同じ妖狐族だが違う村の出身者だ。ブーメランの使い手だが、タマモと同じく強力なサイキッカーだ。狐火という発火能力まで備えている。

 それぞれが一週間ほどでその配下の配備も済ませた。十人ほどの六つの小隊を率いる。総勢三百人の近衛旅団が出来上がった。


 決起集会の後、大宴会を城の中庭で執り行った。オオガミやイソルダ、アルジェ、中隊長五人と円卓を囲んだ。そこにスミエルもやってきた。

「ドーマハルト、かなりの精鋭を集めたようだな。見ているだけでわくわくするような猛者たちの集まりだ。この戦力をいかに使う」

「おそらく敵の各所にもスパイを送り込んでいるんだろ、その情報が欲しい」

「うむたしかに、ユートやエンドワースには何人かの配下の物を忍ばせておる。情報はヘイ・オン・ワイ商会の元に集まっている」

「なんだってあの本屋にどういうことだ」

「ヘイ・オン・ワイ商会の書物の中に暗号が隠されており、各地に発送や仕入れた書物で連絡を取り合っておるのじゃ。そしてその首領が諜報機関のトップ、おぬしも知っているゴランである」

 あのゴランじいさんが、そうか俺の監視も兼ねて、ベールの店にいたんだな。このスミエルじいさんの周到さには舌を巻く。


「新しい情報が欲しければ、この地のヘイ・オン・ワイ書店に行くがよいゴランも来ているはずだ」

「わかった、それで戦略を練ることにしよう。明日報告する」


 兵士たちの宴席の中にどこから紛れ込んだかタマモがいる。まったく仕方ないやつだ。

「モモ、ちょっと聞きたいんだが、妖狐の娘ってのは誰でもあんな感じなのか」タマモに目をやり問いてみた。

「そうですね。ちょっと天真爛漫すぎるかもしれませんが、本来私たちは陽気な気質ですので普通かと思いますけど」そうかちょっと安心した。

「そうかありがとう。それとその発火能力というのはタマモにも使えるのか?」

「ええたぶん、あの子はすごい潜在能力を秘めてますわ、私の部隊に欲しいくらいです」 従軍にはやはり連れていくか、モモに鍛えてもらえれば安心だ。

「それじゃ頼む。戦士として育ててくれ」

「かしこまりました。命を懸けてお守りもします」

「アオナ、エルフ族はあまり俺たち人間とかかわりを持たないのじゃないのか。ハルナといい君といいどういうことなんだ」

「それは違いますわ、一族の中には積極的に人族と交わりたいと考える女たちが多いのです」

「流布されている噂は、男どものやきもちのせいなのか、そいつは面白い」

 アオナが近づき耳元で小さな声で

「王にはご報告をアーカムスと付き合っておりますの、できれば内密に」

 たいした異文化交流だ。エルフ族の女性の見方が変わった。

「オオミドウは東の島国から来たのか?刀の形がこの国の物とは違うようだが」

「よくお分かりでその通りでござります。鬼丸と申す業物です」

 渡辺綱(わたなべ の つな)が一条戻橋で鬼の腕を斬った刀と同名とは、まさかな。

「一度、国の剣技を教えてくれ、俺は我流で悪い癖が身に着いてるやもしれん。流派はあるのか」

「鞍馬一刀神流と申します。免許皆伝いたしております」鞍馬の天狗さまか義経も覚えた剣法かな。

「では天狗殿いずれご教授たのんだぞ」つい言ってしまったが鼻っ柱をへし折るつもりととられたかな。

「なぜそれを拙者は天狗族の末裔、閣下の慧眼(けいがん)には恐れ入りまする」あれ?正解か。

「キグナスはユートガルト学園を卒業したそうだな。同窓生になるな」

「閣下が開発した学食メニューのとりこでした。おかげでこんな体型に・・いえそんなことはありません」

 学園生活で一番力を入れたのが学食の改革だった。和、洋、中と各種足りなかったメニューを生徒会長時代、ミッチーと開発したのだった。今でもそんなに人気だとは嬉しいものだ。

「アーカムスは熊の獣人だそうだが、それは人間体か?」オオガミのように変身できるタイプかな。

「いえ、私は人間とのハイブリットでして、父親の血を継いでこのような容姿になっております。獣人族は父親の容姿を継ぐことが多いようです。しかし特性は熊族の力を引いております」

 話してみるといずれも頼もしいやつらだ。これなら俺の軍隊も心配がいらない。


 そして夜宴はいつまでも続いていった。

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