■ヨモツの太陽
「ヨモツの目が閉じる。野営地を見つけなければ」
空を見つめてバクルスが宝蔵院に告げた。
「それは夜が来るということか」
「今、四回瞬きをした。あと二つで闇が来る」
地下世界にも昼夜はあるようであった。天井に光る太陽はヨモツの目と呼ばれ眠りに就く様に瞼を閉じると12時間の闇が地底世界を支配する。
「オオガミさん、夜が来ます。どこかキャンプ地を探さないと」
「あと二時間で夜が来るんだな。このまま探しながら進んでいくか」
モアのスピードを上げる。
しばらくすると川沿いに窪地を見つけた。
「晴明テントを張れ」
「はーい、まだ明るいんだけどね。本当に夜が来るの?地上時間で今は五時半、あと三十分で天鼓君の言った夜の時間だ。不思議だな地上との時差がほとんどないよ」
「ヨモツの光源にしても、その時間的法則や色んな事がまだまだ不明ですが問題ないでしょう。またゆっくり研究させてもらいましょう」
教団を追う行為に関係のないこの現象は宝蔵院にとって興味の対象にはなりえなかった。そして突然に闇が訪れたがすでに大テントの中には明かりが設置され八人は車座に座っていた。
「この世界を移動することができるのは十二時間だけか、これは大きな制約だな。天鼓、闇でも移動することができるすべはないか」
「あきらめるしかないですね。大ヒクイドリも眠ってしまいますし、これがこの世界のルールと思ってください」
「日の出とともに働き日の入りと共に休むだね。平安の時もそうだったじゃない。オオガミさんも現代人になったもんだね」
「そうだな。すっかり忘れていたぜ」
オオガミは寝転がり黙ってしまった。
「明日からは夜になる前に翌日の準備をするようにして、今日はこれからご飯にして眠りましょう」
晴明は夕食の準備を始めるのであった。




