■大ヒクイドリ
「バクルス、これから僕についてきてこの世界のガイドを頼んだよ」
「天鼓マスター、かしこまりました」
使役したバクルスは旅の準備を始め、小屋の倉庫から次々と地底世界での冒険道具を運び出してきた。
「この手綱は何だろう?馬でもいるんですか」
久遠はバクルスに尋ねた。
「これは大ヒクイドリで移動するときに使う手綱です」
「へえ、そんな移動手段があるんだ。この小屋はどうしてこんなにたくさんの道具あるんだ」
「それはここが旅人の為の施設だからです。地上から来たものはまずここで旅の装備を整えてから出発するのです」
「バスクルは旅のガイドさんだったんだ」
「門が閉まってすっかり仕事はなくなりましたが」
つまりそれが原因で死亡してしまったようでもあった。
「その大ヒクイドリは何処にいるんだ」
綱はあっても肝心の馬がいなければ旅に出ることができない。
「この先に湖があるのでそこに群れを成して住み着いているはずです」
「私がテイムして連れてくる」
ヤーシャはバクスルが示した方向へ走っていったのであった。バスクルは今度は鞍を取り出して掃除を始めた。
しばらくするとヤーシャが戻ってきたのだが晴明たちは連れてきた大ヒクイドリを見て驚いた。
「これってヒクイドリじゃなくて、ジャイアントモアだ」
その鳥はゆうに三メートルを超えた地上世界では絶滅してしまったモアのような鳥であった。
「おお、これなら丈夫そうだ。鞍を載せましょう」
久遠はモアたちに手綱と鞍をバクスルと共につけ始めた。
「久遠さん、ずいぶん慣れてますね。どうしてですか」
「大学時代アルバイトで牧場にいたんだよ。そこで馬の世話をしていたもので、でもこのモアかわいいですね」
モアをかわいがる久遠に鳥たちも懐いているようだった。
出発の用意を忙しく始める晴明たちとは対照的にオオガミと白鳥はこれからの行動を話し合っていた。
「そうだな白鳥、別れて探すよりも全員で行動したほうがよさそうだな」
当初は迷宮のチーム分けで二班で晴海の両親と教団を追う計画を企てていたが地底世界を実際に見てそう結論に達した。
「パクスル、街の場所はわかっているんだろうな」
バクスルはカバンから地図を取り出した。
「最初にできた街、ラルヴァンダードへ向かいましょう」
モアにまたがりバスクルを先頭に一同は駆けだしたのであった。




