■宝蔵院のスキル
「オオガミさん少し待っていてください」
小屋へ向かうオオガミを引き留めてなにやら作業を始めた。
「天鼓君それはなに?」
晴明が宝蔵院に聞くと
「このポイントは地上世界に戻る起点なのでビーコンを設置しているんですよ。晴明君あとでここに結界を張っておいてください」
「これで印の結界を張っておけば僕の転送の対象にできるのですぐに戻って来れるよ」
いつまたこの道を使って帰ることができるのか晴明たちの行く末はいまだ見えてこない。
見つけた建物に久遠が先に到着し注意深く窓を覗き込んでいた。オオガミもほどなく到着すると久遠に
「中には誰もいないようだ。入るぞ」
ドアノブを引くオオガミだが鍵が掛けられていた。
「鍵は僕に任せてください。天鼓君のマルチツールナイフにオートで解錠するツールがあるので」
鍵穴にドライバーのようなツールを差し込むとくるくると勝手に回り始め鍵の開いた音がした。
かび臭い匂いが立ち込めた部屋には生活感がまるで感じられない。
「住んでいないのかな」
晴明はいろいろな部屋を開けて調べ始めキッチンにたどり着くと
「天鼓君、死体があるよ!」
そこには魔族らしき骸骨が床に倒れていた。
「これで、事情を聞けるものが見つかりましたね」
「天鼓、どういうことだ。死体だぞ、何を聞く」
宝蔵院は杖をゆっくりと動かして呪文を唱え始めた。死霊魔術を使った。死体はぎこちなく動き始め宝蔵院の元へと歩き始めた。
「なるほどそう言うことか。しかしどうやって意思疎通をするんだ」
オオガミは宝蔵院の行動の意図をわからずにいた。
「声帯を取り付けてやるんですよ」
「天鼓君3Dプリンターは飛行船だよ」
「スキルを授かったと言っていたでしょ」
宝蔵院は死体の首に両手を合わせ静かに開いていくと風が吹き込み、みるみる間に骸骨に肉が生成された。
「すごい、カグヤの使う物質変換みたいなスキルなの」
「そうですね近いと言えば近いですね。『錬金』と言うスキルなんです。僕が理解する理論の範囲内で素材の元素さえあればなんでも生成することができるんです」
うれしそうな顔の宝蔵院にカグヤは
「私の能力を超えているわ、核融合もできるでしょあなた」
「確かに理論上は可能ですね。それよりこいつに話をさせましょう」
肉付けされた骸骨はヤギの角をはやしたサテュロスのような魔物であった。
「名前はなんだ」
「・・・バクルス」
「バクルス?司教杖か、聖職者なのか」
「アルテミス様を讃えているだけの男です」
ベゼル教の関係者でないことがわかり一同はほっとしていた。




