■開門
晴明と宝蔵院は第十階層のゲストハウスで二日間色々と思い出話に花を咲かしていたがあとから来た久遠たちは思いもよらぬショートカットで来たこの十階層で暇を持て余していた。
「晴明君お願いがあるんですけど、オオガミさんがやってくるまで僕を鍛えてもらえませんか」
久遠は手に入れたスキルだけではこれから先は十分ではないと考えているようであった。
「そんなに焦らなくてもいいんじゃないですか。久遠さんは今できることをすればそれで期待に応えていると思いますよ。こんな年下の僕からいうのは何ですが」
「言われちゃったな。晴海様のことを考えると焦ってしまうんだ。せっかく魔法を使えるようになったのに回復しかできないなんてこの異世界では何か足りない気がするんだ」
「僕が何か考えてみましょう。その眼鏡を貸してください。巻物読んだ時の記録を見て見ます」
宝蔵院は久遠からマルチメガネを受け取ると解析を始めた。
「おお興味深い、これが治癒の構築アセンブルですか。久遠さんちょっと待っていただけます」
コーヒーを飲みながら宝蔵院は分析を始めた。
「何かわかりそうか宝蔵院君」
「ちょっと静かに急かさないでください」
晴明の作った具だくさんのクレープで糖分を補給しながらコーヒーを楽しんでいた。
「御堂に貴具、俺たちはこの先にはいかない足を引っ張るだけだ。地上に戻るぞ。ほかにやることを思いついた」
「拙者はそれがいいと思います。侃お前も感じているだろう力の無さを」
「導魔法師様にもっと鍛えてもらってから再挑戦するのが賢明な判断のようですね」
いやに素直な貴具であったが
「久遠、お前は無理をしてでもこの先に進め。あのお嬢ちゃんを救えるのはそのスキルだけのようだと思うぞ」
「貴具さん・・・その言葉晴海様に聞かせてあげたいです」
「分かりましたよ!治癒はこれから先どんどん強力になります。さすがに死者を生き返らせることは無理ですが究極の蘇生術に発展します」
「本当かい、どうすればいいんだ」
「ひたすら使用して練度をあげることです」
「そうか、まだまだということか」
がっかりとする久遠だが
「何しょぼくれてるんですか、やればできるということがわかればやりがいがあるでしょ」
「晴明君はアグレッシブだな、さすがだよ」
苦笑いしか返せない久遠であった。
「待たせたな、準備は整っているか」
オオガミたちがやっきた。
「オオガミさん!待っていたよ。天鼓君、開門の準備を頼むよ」
いよいよ下への階のチャレンジが始まるのであった。




