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■オオガミの悩み

 ヤーシャはある違和感を抱えながら迷宮を進んでいた。軽足たちから遅れること一日、オオガミ、白鳥、ヤーシャ、カグヤの四人はすでに五階層の階層主タロスを倒したところであった。

 しばし休憩を取っていた。

「オオガミちょっとこっちへ来てくれ」

 ヤーシャはオオガミを呼んで白鳥とカグヤから距離を取った。

「なんだ、ヤーシャ気が付いたか」

「やっぱりな、傷は癒えているだろ、本来の調子じゃないのはなぜだ」

 違和感とはオオガミの迷宮での戦い方だった。

「仕方ない、あとの二人にも言っておこう」

 二人を呼ぶオオガミ

「打ち合わせですか、ここまで順調に進んでいますよね」

 ヤーシャ、カグヤの連携でどんどん進んでいた。白鳥はその補佐の役割を十二分に果たしていたのだった。

「これからの戦いで気を付けてもらいたい点が一つある。俺を頼るな」

「もちろん、最初からそのつもりですよ。オオガミさん、逆に私のことはあまり気にしないでください。ここに潜ってから調子がいいんですよ。体と精神のシンクロ率が上がってミシエル・スワンの戦闘力を取り戻していますから」

「それは結構なことだが、ことは重大な問題だ。俺は今普通の人間並みの回復力しかない」

「月の加護を得れないのだな、想定はしていたが仕方ない」

「朔の月の時のような感じではないが戦闘力は半減しているといっていい、今までこんな状態になったことがないからわからんが」

「ぜいたくな悩みですよオオガミさん、ほかの誰も不死身ではないんですからね。死との対面の恐怖は迷宮に入ってからさらに強く思っているんですよ私は」

「その通りだ。自分を大切にすることに気が付かなければ戦い抜くことはできないぞ」

「そうかなヤーシャ、お前はいつ死んでもいいような戦い方をしているように見えるがな。俺はいつも死にたいと思い続けていたが・・・」

「それでその事実を前に戸惑っているんだろ」

 オオガミはその問いに答えようと考え始めたが何も浮かばずにいた。死という概念が皆無だったからだ。数百年以上も当たり前のように蘇っていたからだ。

「戦闘力はその持っている刀だけでも、晴明を除けばチームの中ではトップだろう。余計なことを考える必要はないでしょう」

 カグヤは自分の分析をオオガミに伝えるとオオガミは一つだけだが考えがまとまったようだ。

「俺は死にたくない。仲間を守れず死ぬことが怖い」

「誰もがそうだよこのチームのみんなは、だけど一つだけ言っておきたい誰かを守って死ぬことを選ばないように」

「晴明も同じようなことを言うだろうな、さあ早くあいつらと合流しよう」

 オオガミを先頭に下の階層へと向かって行った。

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