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■ヨモツ大迷宮の入り口

 飛行船はハルト市国の外に停泊していた。晴明を先頭に全員が神殿に招き入れられスワン教皇の案内で迷宮の入口へと向かった。

「二日前に永晴(えいせい)さまと百花(ももか)さまがお入りになられました」

「やっぱり二人はもう来ていたんですね。何か伝言は残されてないんですか」

「そうでした。これを」

 スワン教皇は一枚の手紙と優曇華(うどんげ)の実を晴明に渡した。百花からであった。

「私たちは急いで最深部を目指します。この実はあなたに託します。残りを集めてください。そしてあの子を頼みます」

 短い伝言であったが晴海の両親の決意が読み取れた。手紙を白鳥に渡した。

「大事なことを託されたね。思いっきり心を伝えるんだ晴海に、彼女が生まれたときから見守ってきたんだからわが娘も同然だ、あの子が私の小説の中で一番好きなストーリーは運命の君に助けられるシリーズもので[ミルミルミルフィーお姫]だ、その言葉を叫べば君なら必ず彼女を救い出せる私からも頼んだよ」

 なんだか恥ずかしいタイトルを叫ばなくてはいけないなんてと思いつつも

「はい、あんなつらい目にあっている晴海を必ず僕がこの手に取り戻します」

「いい返事だ、さあ行ってこい」

 晴明と宝蔵院を送り出した。迷宮の入り口は真っ黒な空間だけがぽっかりと口を開けていた。

「興味深い、どうやら異次元に近いものを感じますね。とりあえず手をつないで入りましょう」


 少しのめまいを感じながら入口を通り抜けると明るく広がった草原になっていた。ふりむいて来たところを見たが出口らしいものは何もなく壁が続いていた。

「一方通行なのか、どうやって戻るんだろう」

「この階層の出口を空ければそこが出口になります。それよりお父さんを呼んでみてくれません」

 晴明は父さんメダルをオーディンの馬に投入したが変化は起こらなかった。

「あれ?」

「やはりここは異次元牢獄と同じ構造ですね。外界と完全に遮断されているんですね」

「頼りにしてるよ天鼓君、二人で乗り切らなくっちゃ」

「任せてくださいいいスキルを授かりましたよ」

「えっ僕はやっぱり変化なかったけど教えてよ」

「ふっふ、お楽しみですよ、いずれ披露させてもらいますから、それより後から来る人にメモを残したいので晴明君の式神を一体召還してください」

 宝蔵院は一枚の紙に迷宮のガイドを(したた)めて、式神モグちゃんに託した。

「あとから来た人にそれを見せるんだよ。危なくなったら土に潜るんだよ」

 半分土に隠れて敬礼をするモグちゃんだった。


 空には太陽がないが昼間のように明るい空間、風も少し吹いているようだ。やはり異次元牢獄と同じだ。あたりを警戒しながら二人は進んでいった。

「この方角でいいのかな」

「情報によるとここは入ってまっすぐで出口です」

「前方には何もないけどどのくらい進めばいいのかな」

 建物も木もなくただただ草原が続く階層であった。

「この階層は倒した敵の数で出口が現れるんですといっても・・・エンカウントしませんね」

 一時間歩き続けたがまったく敵が現れてこなかったのだった。

「休憩しようか、お茶でも出すよ」

 晴明はアイテムボックスからお茶道具を取り出して魔法で湯を沸かし宝蔵院に振る舞った。

「いいお茶ですね。まあ敵が出てこないのもこの迷宮の意図かもしれませんね。じらして油断したところを襲ってきそうですね」

「果報は寝て待てだね」

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