◆飛行船からの連絡
街の中心の温泉施設の前でタマモは立ちすくんでいた。
「どうしたの母さん」
「ここの領主の屋敷だったんだよ。外装はそのままでホテルになっているのね」
「ガイドブックにも書いてあるよ、よく知ってるね」
「あら、ミシェルの名前がないじゃない、あまり調べてないのね、ミッチーが立ち上げた事業なのに」
「歴史ってそんなもんじゃないの僕たち平安にいたけど今教えられていることとはずいぶん違っていたじゃない」
「まあそうね。ちょっと寂しいけど」
と言いながら二人はその温泉に入っていった。
「サマラ、いいところだね、君の街は」
「そうでしょ、今回初めていろいろなとこを旅したけど落ち着くわ故郷は、ねえ今度ヨシュアの故郷へ行ってみたいな」
「僕たちは穴蔵暮らしでそんなに見て回るところはないし、食べるものも美味しいものはないよ」
「そんな生まれ故郷をそういうふうに言うのはよくないわ、あなただけの思い出もあるでしょ」
「そんなもんかなぁ・・・でもエヴァ様には逢いたいな」
「アースラのお母様よね、私にとってはおばあ様か私もお会いしたいわ」
温泉街のお土産物屋横丁を歩く二人はそんなことを話しながら手をつないで歩くのであった。男女の仲とは不思議なものでちょっとしたきっかけで大きく変わるものだ。晴明が心配してあれこれ考えることもなく自然と出来上がるカップルもある。
「サマラお腹空かないそろそろお昼だよ」
「カレー食べましょうか。このベールの名物なのよ」
「僕も大好きさ、そうしよう」
「母さん遅いよ。十分以上待ったよ」
「ごめんごめん、旅館の改装のヒントになるかと思ってあちこち見てたの」
「なんか参考になることあった」
「やっぱりうちの旅館よりいいところはないとわかったわ」
「じゃあ、ここらで満足したよね、戻れ母さん!」
「あらいやーん、またすぐに呼んでよね」
オーディンの馬へと戻って行った。
「さてお昼ごはん食べて宮殿に一回戻ろうかな」
店探しを始める晴明は、カレーの匂いに誘われた。
「カレーって匂いだけでそそられちゃうな。行ってみるか」
店を覗くとサマラとヨシュアがいた。
「邪魔したらまずいな。別の店探すか」
気づかれぬよう立ち去る晴明だった。
「一度カレーの口になると次のチョイスが難しいな」
ぶつぶつと言いながら店を物色する晴明は本屋を見つけた。
「あっヘイ・オン・ワイだ。エイジェントの人がいればおすすめ聞いてみるか」
ドアを開けると店員が
「!晴明さまですね、ちょうどよかったお伝えしたいことが」
「エージェントの方ですか、なんでしょう」
ぽっちゃりした男に向かって問い返した。
「ええ、Jの兄のFです。至急宮殿まで戻ってください。通信が入って飛行船が二時間くらいでここへ到着するようなんです」
「ほんとですか、ありがとうございます。すぐに戻りたいんですがお昼ごはんがまだでおすすめの店あります」
「情報通りの方のようですね。どんなものがお望みですか」
「んーキグナス一番以外で美味しいカレー屋さんてあります」
「それなら任せてください。私も宮殿に行きますのでご一緒に、シーフードカレーのいい店があるんですよ」
「いいですね。お願いします」
Fは手早く店を閉めると晴明を案内した。宮殿に向かう道沿いにあるようで本屋からはすぐの場所であった。さすが食いしん坊のJの兄だ、飛び切りいいスパイスの匂いが立ち込めた店内であった。スペシャルカレーを二つ、一つは大盛りをオーダーした。
「美味しいですね。ココナツミルクとひよこ豆、エビ、イカ、ムール貝、味のベースはビスクだ」
「すごい分析力ですね、感心しします。ところで連絡によると大事な方をお連れするようなんですどんな方でしょう」
「さあ?わからないですよ。そうだ、サマラとヨシュアも見つけて伝えなくっちゃ、早く食べて出ましょう」
晴明は急いで二人のいた店に行くとまだ二人でコーヒーを飲みながら話しをていた。連絡を伝えて四人で宮殿に戻って行った。




