◆分断
空にはうっすらと朏、新月から三日目、オオガミにとってはアウェイなコンディションだ。にらみ合うオオガミと網剪、先に動いたのは網剪であった。大きなはさみでオオガミで切りつける。その攻撃をものともせずに突っ込んでいくオオガミ、ヤーシャから受け取ったナイフは宝蔵院特製のダイヤモンドの硬度に近い特別製の合金だ。はさみとナイフがぶつかり合うとオオガミはナイフをそのままつき押していくと網剪の右腕を割きながら食い込んでいった。
「ぐあっっ!!」
網剪は声を上げのけぞった。
「この列車にはお前さんの席はないんだよ」
ナイフを首を目掛けて突き刺したが、一つ手抜かりがあった。最後のあがきの左腕のハサミが深々とオオガミの腹に突き刺さった。二人はそのまま列車から転げ落ちていった。
ゴロゴロと転がるオオガミと網剪
「オオガミさーん!!!」
後方車輛がなくなった晴明の乗る列車は無情にも走り去ってしまった。飛び降りようとする晴明を止める宝蔵院
「今はこの列車に残らないとオオガミ氏は大丈夫ですよ」
彼の判断は冷徹のようだが正しい状況判断であった。不死身のオオガミより列車に残り次の攻撃に備えなければならなかった。
ヤーシャとカグヤは列車を追うように線路をかけてきた。線路脇に血だらけで転がる網剪首に深々とナイフが突き刺さり絶命しているが左腕はオオガミの腹を突きさしたままだ。
「ナイフ返すぜ。悪いがそいつから抜いてくれ」
「そんなことよりそのお腹が先よ」
カグヤが左腕を引き抜いた。見事に背中まで突き抜けて内臓がはみ出し血まみれだ。
「さらしを巻いてやれカグヤ」
オオガミの来ていた上着を物質変換してカグヤは包帯を作り出すとぐるぐると巻き付けた。
「どうだオオガミどのくらいで動けそうだ」
「お気に入りの上着だったんだぜ、でっかく穴をあけられちまったな、今の月だと半日は無理だ。おまえたちだけで列車を追えばいい」
「強がるな、どうせここで待っていれば次の列車が来るだろうそれまで私たちと休め」
二人はオオガミを抱えて木陰まで運んで休ませていた。
「晴明何かあったの」
「うん、オオガミさんとヤーシャやカグヤが敵の策略で離ればなれになったんだよ」
「えっ私たち四人でどうするの」
「サマラさん、僕たちはベールを目指しましょう」
「そうだよ、きっと心配なんていらないよ。タフなオオガミさんがいれば」
四人が相談していると車掌がやってきて、後方を見て
「れ、列車がない!!どうなっているんですか爆弾を持った男がいたと思えば・・・」
「引き返してもらえませんか」
「そんなことはできませんよ。とりあえず次のメラクで指示を待ちます」
列車は運航を続けメラクへと到着した。




