◆オオガミ戦う
最初に異変に気が付いたのはオオガミだった。ヤーシャに目で合図を送り列車の連結部分まで誘った。
「俺はここから前の車両を調べる、後ろを頼むぞ」
「オオガミ、これを持っていけ」
宝蔵院の通信インカムだ。こういったものが大嫌いなオオガミは付き返して
「それぞれその場で対処だ、お前さんを選んだ理由を考えろ」
ヤーシャもにやりと笑う。後ろの車両を目指すが途中、元の席を横切るがカグヤが後に続いた。
「何か起こっているのね。手伝うわ」
「好きにしろ」
「何を探せばいいのかしらそれだけでも教えてもらえません」
「ドゥーベで新たに乗ってきた乗客だ」
ヤーシャは停車中外を監視していたのだった、この列車は晴明たち以外は二十数名の乗客だが乗車時からチェックをしていたのだった。
「どんな特徴があるの」
「男二人だ、帽子で顔を隠していたが黒いコートを着ている。一人はこの車両より後ろへ移動していった」
晴明たちの乗った列車は機関車輛と三両の乗客車、そして五両の貨物車で構成されていた。
「後ろ?貨物しかないのでは」
「そうだ何かをしようとしているだ」
「何かって?」
「オオガミは火薬の匂いがすると言っていた」
「列車を爆破するっていうの」
「そのつもりで探れ」
一番前の客車ではオオガミが一人の男の顔を踏みつけていた。機関車輛から出てきた車掌が驚いている。
「お客様、喧嘩はおやめください」
慌てて駆け寄る車掌に
「来るんじゃない!爆弾をこいつは持っている」
ひきつる顔の車掌、慌てて後ずさる。
「そんな手荒なことをしちゃ爆発しちゃうじゃないですか。や。やめてください」
「そんなへまするかよ、まあ見ておけ」
顔から足を上げると思いっきり蹴りつけた。男の体は軽々と天井まで吹っ飛び床にバウンドした。
気を失った男から爆弾を取りあげ窓から男を放り投げると並走する川に落ちた。
「無賃乗車だ。代わりにこれでも取っておいてくれ」
爆弾を車掌に放り投げ、後ろの車両に戻ろうとすると
「あの、お客さん、この爆弾、起爆装置が付いていませんけど・・・」
慌ててふりむき爆弾をまじまじと見るオオガミ
「くそっ!囮か」




