◆ドゥーベ行列車
ドメルに到着した晴明たちは駅を目指した。
「あっ!イーシャ」
サマラは国境警備の兵士、乳母であったドラゴノイドを見つけ駆け寄った。
「サマラ様、無事晴明は仲間と会えたのですね」
「イーシャのおかげよ竜宮丸は役に立ったわ。ところでメラクの橋梁はどうなっているの」
「改修には一年はかかると駅員たちは言っています」
「そうかやっぱり、ドゥーベからベールに向かうしかないのね」
「ところで彼は何者だ」
ヨシュアを見てイーシャは尋ねた。
「彼は男の子よドラゴノイドの」
「ええ!あれが男!」
イーシャはヨシュアに近づいていきじろじろと眺めた。
「初めましてヨシュアです。サマラのお知り合いですか」
「あなた一人なのドラゴノイドは」
「故郷に帰れば沢山いますけど、ここからはかなり遠いですよ」
「どこなんだ。教えてくれ」
ヨシュアはドラゴニアの場所を丁寧に教えた。
「よし分かった。サマラ、アースラに伝えておいてくれ、私は旅に出る」
というと大急ぎで走り去っていった。
「もう、イーシャたら私には厳しく国境を出るなと言っておいて勝手なんだから」
「でもヨシュア、簡単に教えていいのか居、エヴァの了解も得ずに」
「そうだね晴明君、あまりに勢いになんの考えもなしにしゃべってしまった」
「いいのよヨシュアは交流大使ってことできたことにすればいいのよ」
サマラは納得顔でそう言った。ベールにいるドラゴノイドの社会は閉鎖的すぎる。こうした改革がサマラにとっての希望なのだ。
ドメル駅に着くと晴明が切符を手配して戻ってきた。
「みんなあと10分で列車が出るから急いで」
「えっもう出発しちゃうの!カレー屋さんをヨシュアに教えたかったのにご飯はどうするの」
「抜かりはないよお弁当はもう買ってあるから、行くよみんな」
「異世界の列車ですか興味深い、よく研究させてもらいましょうか」
宝蔵院も鉄分がかなり多い方だった。
列車は定刻で出発をした。列車は特急車両とは違い新幹線のような座席配置であった。オオガミと晴明。サマラとヨシュア、宝蔵院とヤーシャとカグヤという座先配置となった。サマラは晴明の隣に座りたかったようだが晴明はさっさとオオガミと座席に座ってしまい。仕方なくヨシュアと座ることになったが不服そうだった。
窓際に座る晴明は景色を見ながら
「昔と比べて景色はどうオオガミさん、四時間ほどでドゥーベに着くよ」
「四時間か早いな昔、馬車で行った時は半日以上は掛ったもんだがな。ドメルでタマモを叔母に預けたと思ったら馬車に隠れていてな。それが腐れ縁の始まりだ」
「へえ母さんらしいや。思いつきの行動は小さな頃から変わってないや」
晴明は窓から見える景色を見ながら母が無理やり父についてきた様子を想像して笑った。
「ねえ、ヨシュアもイーシャのようにベールのほかのドラゴノイドに逢いたい」
「どうかな僕はサマラに逢えただけで満足だけどな」
何気なく言ったつもりだろうが、窓際で外を見ながらサマラは
「あらそんなこと言うんだ。それなら私の従者にしてあげるからしっかり働くのよ」
「本当ですか!喜んで」
既に尻にひかれる関係となってしまった。
ヤーシャとカグヤ二人しか座席に座っていない。宝蔵院は乗り込んですぐに列車中を調べ廻っているようだった。ヤーシャとカグヤは一つ席を開け黙っているだけであった。




