▼古代の月夜
野営地で待つ白兎と卑弥呼はなぜか転送してきた晴明たちの目の前で待っていた。
「さすがツクヨミの卦は正確ね」
白兎は稷兎に駆け寄ると手を握った。
「待たせたな作戦は成功だ、卑弥呼どうしてやってきたんだ、さあこのままミヤマまで帰ろう」
「黄泉津はどうする。このまま放っておくのか、何をするかわからないぞ」
「卦にはどう出ている」
「何も見えないままだ、脅威であることには変わりない」
オオガミから離れ宝蔵院はまたチーム晴明だけで会議を始めた。
「晴明君、そろそろ現代に戻りましょう」
「どうして天鼓君、まだオオガミさんの謎は解けていないよ」
「いえ、すべてわかりました。あとは現代に戻ってもの言う石と世界樹を探し出して、百花さんの血を照合していけば謎が解けるはずです。簡単な引き算で、それには僕の研究所の設備が必要なんです」
「私はもうちょっとオオガミの恋を見ていきたいんだけど」
「もう母さん、そんな野次馬根性はだめだよ。それにまだ心配だよ、黄泉津が何をするかわからないんだよ」
「いえ、これ以上は危険だと思います。速やかに術を使って帰りましょう」
撤退するか継続するかで意見が分かれているのであった。
そんなことを言い合っている間に、オオガミたちは帰路につき始めていた。
「仕方ないから、この話はあとでね」
晴明も後を追っていく
「タマモさんも何とか説得してください。彼しか戻る術を使えないし、今夜は満月で戻るなら絶好の機会なんですから」
「天ちゃんが言うなら晴ちゃんに言うこと聞くように言ってみるわ」
「そうだ、タマモさんこのメダルに術を転移するようにお願いしてください」
「やっぱり頭いいね天ちゃんは、そのメダルがあれば私でも術を発動できるってことね」
「そうです。万が一ということで」
タマモは晴明のところへ宝蔵院から渡されたメダルを持って向かって行った。晴明は何の疑いもなく母の願いにこたえたのであった。
「これで僕に何かあっても母さんはこれを使って戻るんだよ」と言っていた。
オオガミたちは海沿東へ進むコースでミヤマを目指していた。
「イワナにサクヤ、こんなに旅をしたことなかったでしょ。大丈夫」
タマモは二人に話しかけた。
「それがお腹が空いてサクヤとどうしましょうと言っていたところなんです」
「そうよね、普通の人に戻ったとか天ちゃん言ってたもんね。オオガミに言ってくるわ」
日も暮れ浜辺に打ち上げられていた白兎を見つけた近くであった。
「オオガミ、晩御飯にしませんか、みんなお腹が減ってると思うの」
「そうだなこのあたりで夜営するか須佐準備をしてくれ」
「おーい、ヤクモ俺と一緒に海で魚を取りに行くぞ」
須佐は晴明は投網を持って海辺に向かって行った。
「何か音がしませんか?」晴明は二人で引く網の手を止めた。
「さあ、気のせいじゃないか」
須佐は沖に目をやると、こちらに向かってくる物体に気が付いた。どんどん迫りくる波に晴明も注意深く見つめた。
「敵襲だ!!」須佐が叫んだ。
やがて月明かりがその姿を照らした。




