▼脱出
「二人はどうなった、無事なのか天鼓!」
オオヤマは天鼓に詰め寄った。
「理論上はこれで二人から力は奪えたはずです」
パネルを操作して生体ポッドから液体を排出した。タマモはタオルを持って来て二人を介抱した。
「二人とも大丈夫みたい、元気そうよ」
「ところで天鼓、どうやってその答えを見つけ出した」
オオヤマは長年研究したことをいとも簡単に宝蔵院によって解明されたことに驚いていた。
「昔研究していたギルガメシュ叙事詩のウタナピシュティムの言葉にヒントを得たんです」
「ううむ、よくわからん」
オオヤマは首をかしげるばかりであった。宝蔵院は収拾した液体を小瓶に移し替えていた。五本の小瓶は注射針とケースに収められた。
「その血清があれば誰でも不老不死になれるのか」
「オオガミさん、適合者以外はただの強力な回復薬にすぎません。イワナ、サクヤはその元となるもの言う石や世界樹の適合者であったように」
「つまり私の研究も偶然の産物であったということか、悲しいこと言ってくれる」
「いえ、そんなことはありませんよオオガミさんの基礎研究があってこそなんですから」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「元気出してお父様、わたしたちは研究が完成したのはお父様の努力だったと知っています」
「よし、長居は無用だ。明日には黄泉津がやってくる、全員でこの島から脱出するぞ」
オオガミはそう言ったが
「天鼓どうすればいいんだ。この島には船はないぞ」
「任せてください。晴明くんがいます」
「もしかして晴明は転送を使えるのか、かなり高位な術式と聞いているぞ」
「白兎さんのところまでならこの人数でも大丈夫です」
「その前にここの貯蔵されている霊薬を収納してもらえますか」
「アマテラス粒子の凝縮水だよね。わかったよ天鼓君、みんなは表で待っていてくれる」
境内で準備をして待つオオガミたちだがタマモが
「船が来るよ。ハルちゃん急いで」
「お待たせ行くよ」
あまとぶや
かりのゆくさきしめしけれ
かのちめざしてとぶらう
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