▼タマモの興味
「天鼓君、タイムリミットは一週間だって黄泉津がここに来るよ」
熱心にオオヤマにレクチャーを受けている宝蔵院に報告する晴明だが二人とも聞いていない。
「なるほどでは、この気流分配器を使って増幅した素粒子を注入するんですか、それじゃ・・・」
「ちょっと邪魔しますけど聞いてもらえませんか」
「おっと、晴明でしたか、なんですか」
「一週間後に黄泉津が此処へやってくるんです」
「それはいかん、急がなければ、天鼓君こっちへ来手伝ってくれ」
忙しそうに作業を始めたので晴明は興味深くその場にとどまっていた。
「ねえ、オオガミ、白兎とは結婚しているのどうなの」
タマモが明け透けと聞くと
「そうだな夫婦の契りを結んだのは旅をして一年を経ったころだろうか」
「どっちから言い出したのよ」
興味津々のタマモ、朴念仁としてよく知っているオオガミの違いっぷりに驚いていたのだ。恥ずかしげもなくオオガミは
「俺が申し込んだ。あいつは肯いてくれた」
「キャーステキね。でも卑弥呼ちゃんも好きだったんでしょ」
「ただの幼馴染だ。黄泉津はご執心だったが彼女を殺してしまったがな」
「でも蘇らせたんでしょ」
「あれは彼女であって彼女でない育てながらそう感じた。白兎はツクヨミという名をつけて呼んでいたがな」
タマモは考え込んでしまった。ツクヨミはオオガミに呪いをかけた女の名であった。
「どうしたんだタマモ考え込んでしまって、腹が空いたか」
オーディンの馬に憑依した体は食事を必要としない。
「申し訳ないのですが私たちは食事を必要としませんのでここに食べ物はございません」
イワナがそう言うと
「私も不思議とお腹が空く様子がないと思っているのだが」
「おそらくアマテラス粒子のおかげでしょう。私は水さえあれば大丈夫な体になりました」
サクヤはそう言って水桶を持ってくるとオオガミとタマモに盃に注ぎ分け与えた。
「確かに力がみなぎる気がするわ。ところでイワナとサクヤはここで毎日どう過ごしているの」
「どうと言われましてもお父様のお手伝いをしているだけですわ毎日」
「あちゃー、これから一週間退屈だなあ・・・」
「そうですな、私は一つハルアキから剣術の稽古をつけてもらいましょうか」
タマモは笑っていた。立場が逆転していることに
「いいね、それを見て楽しませてもらうとするわ」
かくしてタイムリミットまでの一週間が過ぎ去っていった。




