▼沖ノ島
「だいじょうぶです。予想の範囲内です。晴明君頼みましたよ」
海面からは鮫のひれが無数に筏を取り囲みぐるぐる回っていた。
「ごめんね、ちょっと気絶していてね」
片腕を海の中へと沈め
あまびこの
おとをまゐらすわりなしの
さがなしものにさながらうす
雷撃
強力な電撃が湖中を伝うと、鮫人族は気絶すると腹を出して次々とぷかぷかと浮かび上がってきた。
「こいつらが白兎を痛めつけた連中だな、少しは気が晴れた」
オオガミは口元を少し上げて眺めていた。
「まだ警戒は解かないでくださいね。空からも襲ってくるかもしれませんよ」
その心配はいらなかったようで島までの100キロ近い海路をモーターボートのように突き進んでいった。そして篠の浜辺に筏を打ち揚げた。
「この島が黄泉津の作り出した研究施設なんですか。黄泉津は別の施設にいるということですよね」
「うむ、海へ出る前に通り過ぎたあの大きな階段のある巨大神殿にいる。オオヤマはこの沖ノ島の社に娘ともども軟禁されている。逃げようとするとさっきの鮫人につかまるということだ」
「つまりあの島自体に兵士はいないということですか」
「ちょっと私を少しはねぎらってよ力使い過ぎでへとへとなんだけど」
「あ、そうだ母さんごめん、僕の妖力を分けるよ」
晴明はタマモの背中に抱き着いて狐族の妖力を注いだ。
「あら背中が温かくて気持ちもいいわ」
タマモは目をつぶってその感触を味わっていた。
「これでいいでしょ、行きましょうみんな」
「なんだか前より元気満タンな感じハルちゃんまたやってね」
機嫌が取れたようで晴明は安心して島の中へと先頭でどんどん進んでいった。
すると社が見えてきた。近くまで行くとそこには掃除をしている男がいた。
「誰だ!君たちはどうしてここへ来たんだ」
驚いて箒を投げ捨て社に逃げ込もうとする男に稷兎は
「待つんだ、白兎に聞いてやってきた稷兎だ」
足を止める男
「本当に来てくださったのですか、稷兎さまオオヤマです、ささ中へどうぞ」
社の中に晴明たちは案内された。




