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▼黄泉津と卑弥呼

 慌てて卑弥呼を追ったが姿は見当たらない。もしやと思い黄泉津(よもつ)がいる研究室に入るとわが目を疑う光景が

黄泉津(よもつ)・・・なぜ」

 稷兎(きびつ)は唖然とした。

 卑弥呼の胸に深々と剣を突き刺す黄泉津(よもつ)の姿があった。

黄泉津(よもつ)さま、どうして・・・」

 と白兎(ハクト)は手で口を押さえて目を見開くだけだった。

「待っていたよ卑弥呼、やっと僕のものになる」

 剣から手を放して卑弥呼の頬を両手でなでる黄泉津(よもつ)、卑弥呼はおぼろげな目でそれを見つめていた。

 稷兎(きびつ)はあわてて卑弥呼を黄泉津(よもつ)から引き離したが、胸に突き刺さる剣を見て驚いた。一滴の血も流れていなかった。

「そいつは死人だ。ここを出て行った時にはすでに死んでいたんだ」

 再び卑弥呼を抱き上げて剣を抜くと実験体用のベッドに運んでいった。

「どういうことだ。白兎(ハクト)知っていたのか」

 長年ともに卑弥呼を探し続けた相方は知っていたのかと疑心を抱いた。

「私は知らない。あなたが眠って半年を過ぎたころ黄泉津(よもつ)さまから、卑弥呼さまが出て行ったと聞かされていただけ」

「疑って悪かった。黄泉津(よもつ)説明してくれ」

 無表情に黙々と何かの作業をする背中に問いかけた。

「こいつがこんなことになったのはお前のせいだ。いつまでも目覚めないお前のために魔石機構(からくり)を完成させ、作り出した獣魔によって命を絶たれたんだ」

「魔石機構?あの獣魔たちの核となっているやつか」

「自然の瑪那(マナ)を結晶化した石、生命の石と言ってもいい、あらゆる生命体と融合可能な万能の生命強化素材だが知性を生まない失敗作だ」

「もしかして死んだ卑弥呼にその石を使ったのか」

「仕方なかったんだ、いくらお前に心惹かれていても、俺はあいつが好きだった」

「バカなことを・・・しかし私のためにそんな」

 落ち込む稷兎(きびつ)の手を握る白兎(ハクト)

「卑弥呼をよみがえらせる新しい呪法が見つかったんだ。試させてくれ」

「何をいまさら、静かに眠らせてやってくれ」

「頼む稷兎(きびつ)

 振り返り懇願する黄泉津(よもつ)

「あなた、許してあげて協力してあげて」

 白兎(ハクト)も言った。

「わかった。私は何をすればいいんだ」

「あいつはお前に毎日、自分の瑪那(マナ)をお前に注ぎ込んでいた。その体から複製体(クローン)を作らせてくれ」

 黄泉津(よもつ)の強い思いを受け止めるべく

「わかった、好きにしてくれ」

 その言葉を言い終わるかその前に黄泉津(よもつ)の右手は稷兎(きびつ)の脇腹に食い込んでいった。一滴の血も流さず心霊手術のようにメスも使わず肋骨を一本抜きとっていた。

 その骨を卑弥呼の遺体の上に置くと、両手をかざすと体が分解され遺体は消え失せ骨と勾玉のみが残った。ほのかに光る骨を溶液に漬けた。

「この霊薬(ソーマ)の力でやがて時がたてばもう一度卑弥呼に逢える」

 気味の悪い笑い顔の黄泉津(よもつ)がそう言った。すでに彼もおかしくなっていた。

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