▼異形の者たち
「眠り続けた一年がどうなったのかを卑弥呼が作り出したものを見せてやろう。ついて来い」
黄泉津と白兎のあとを追う稷兎、こんな施設を作っていたのかと驚きながら案内のままおぼつかぬ足取りで地下に潜っていった。
「なんだ、この生き物隊は!」
晴明たちが闘った異形の生き物、ギアーレ、ゴブリンなどの魔物たちが檻の中で異様な声をあげている部屋にたどり着いた。
「こいつらは一体何なんだ。これを卑弥呼が作り出したというのか、あいつは大丈夫なのか」
「狂っているというべきか、俺の言葉など聞く耳を持っていない」
元来は優しく内気な卑弥呼にタカアマーラの意思は平常を保つには耐えがたかったのであろう。それは自我をなくすことによって使命のために動いたあげくの結果がこの様子なのであった。
「卑弥呼はどうしたんだ」
幼馴染の娘を心配する稷兎
「あいつは大地の魔素を結晶化することに見つけた俺の研究結果を見たときに何かが切れたようだ」
「大地の魔素?なんだそれは、それと卑弥呼がどうつながるんだ」
白兎がその言葉を補完する。
「キメラ化の研究では完全な依り代を作ることが不可能なことを黄泉津が思い始めたときに卑弥呼さまはイレギュラーな実験体を作る方向に進むことが最善策だと言い出したんです」
「それでこんな生物たちを作り出したのか」
「ああ、その通りだ。あいつはおかしくなった。我々に害なす存在が必要だと、人類には未来がないと」
「バカげている。どうして止めなかったんだ」
黄泉津は黙って苦渋の表情を浮かべるばかりであった。
稷兎は卑弥呼に思いを寄せていることを知っている。その遠慮が今の事態を招いたと思った。
「俺が止めに行く、必要なことを教えてくれ」
黄泉津は無言のままであるが白兎は私がご同行します。稷兎さま」
一年近く稷兎の面倒を見た白兎には寄せる思いがあった。目覚めた稷兎を見てその思いはさらに強まっていた。
「わかった、白兎手伝いを頼む」
白兎は歓びの表情で肯いた。この人の力になれることがすべてだと思うように
装備を整えた稷兎はどこにいるかもわからぬ卑弥呼を追う道へと白兎と共に旅立った。
そのたびは数十年の時間を必要とした。




