▼女王蟻
戦闘アリを切り捨てながら奥へと進む晴明
「この剣すごい切れ味だな、天叢雲剣以上かも」
須佐から託された十束剣の切れ味に驚いていた。
目の前に塔のようなものが見えた。
「あれは・・・巨大な蟻塚?」
土塊で作られた六階建てのビルのくらいの大きさの蟻塚であった。頂上付近から顔を出すひときわ大きな蟻が見えた。
「上まで上がるの面倒だな、そうだ」
やくもたつ やえがきころも
のしてつぶれろ
重力
蟻塚が押しつぶされていくもうもうと土煙が立ち込め崩落が始まった。
戦闘アリたちの動きが止まった。そして電池が切れたように地面にひれ伏し動かなくなった。
「これでもうだいじょうぶかな」
晴明はうしろを振り向き、みんなに手を振った。真っ先に駆け付けたのは須佐とオオガミ(稷兎)であった。
「すさまじい力だな。十束剣も必要なかったか」
「いえ須佐さま、大変助かりました。お返しします」
「いや、おぬしが持っておったほうが稷兎の力になりそうじゃ」
「ヤクモ!お前は一体、いやはや恐れ入る。この蟻の情報はハクトから聞いておったが、命令なしでは襲ってこないはずであったが」
「おそらく多勢で移動する私たちに反応したんでしょう。一種のトラップですね」
ゴーレムを収納した宝蔵院はそうつぶやいた。
「そうか阿礼、わしらが迂闊であったな。こんな大部隊では警戒をさせるな。しかしおかげで式神はすべて倒され、二十名少しとなったな」
「そう言っておっただろ、稷兎、わしとおぬしと部下数名で行こうといったではないじゃないか」
「すまん、卑弥呼が編成を考えたので逆らえぬであった。阿礼たちがいれば充分であったな」
突然タマモが目を見開き叫ぼうとした瞬間、晴明はふりむきダッシュをする。
崩壊した蟻塚の中から戦闘アリの三倍はあろうかという大きな理が現れていた。
晴明は飛び上がると剣を大きく振りかぶり頭を目掛けて振り下ろしていた。
しかし大きな顎でその剣をガッチと受け止める。
「意外と力が強いな電離」
晴明は剣をプラズマブレードへと変化させて力を込めた。十束剣は光りの刃となり刀身は光りの刃となり、女王蟻の大きな体を真っ二つに切り裂いた。
「うあ、驚いたこの剣どうなっているの」
「その剣をそこまで使いこなせるとは、呪力を刀身にに変える力があるのじゃ」
須佐は驚いてそう言った。
「まだよ!ハルちゃん」
タマモが晴明に叫んだ。
真っ二つに避けた女王蟻の腹から何かが這い出してきた。
警戒をする晴明が剣を下ろして近づいていく
「だいじょうぶもう息絶えている」
這い出してきた女性はすでにこと切れていた。宝蔵院が近づいて観察を始めたとわなわなと震えて。
「なるほど、酷いことをする。この人と昆虫をキメラ化していたようですね。これがあなたたちの言う実験体の一つなんですか!どういう倫理観念を持っているんです」
宝蔵院が珍しく怒っている。兵器として改造された人の姿に
「こんなことをタカアマーラの人たちは平気で行っているんですか」
晴明も怒りをあらわにしている。
「それが黄泉津がおかしくなった理由だ」
オオガミがうつむき絞り出すような声で言った。




