▼敵襲
チリーン♪
静寂の広間に鈴の音が鳴り渡る。どたどたと足音が聞こえ鈴を鳴らした主のところに駆けつける丸メガネに丸々と太った女、遮光器土偶を連想させる。
「卑弥呼さま、何用でしょうか」
遮光器土偶は息を切らせてそう答えた。
「サグメ、転送を使えるものを数名呼び寄せなさい」
転送とは空間飛躍の術である、瞬時に移動するには便利だがその術は多くの魔法力を消費する。そしてサグメはその命令に卑弥呼の外出を知る。卑弥呼は常に外出に転送を使用する。外敵に備えるにも不用意な徒歩での外出を控えているのであった。
「どこへお出かけでしょうか、お供のものもご用意いたします。どのようなご用向きでしょうか」
「稷兎に何か起こるようだ。卦に乱れが生じておる。何も見えてこない、数日前には揺らぎ程度の不確定要素であったがすべてを埋め尽くしてしまいおった」
「イズモで何か起こるのでしょうか。稷兎様が心配です。戦闘要員も必要ですね」
「任せる。明日にはここを出る」
下がるサグメを見つめた卑弥呼はまたふりむき卦を行うのであった。
数日後イズモの圏内へとたどり着いた晴明たちは緊張の面持ちであった。
「稷兎さま、ご注意された方がいいですね。敵意のようなものを予感しています」
晴明は虫の知らせを感じ取ってオオガミにその旨を伝えた。
「お前もそう見たか、一刻前ほどからわしも異変を感じておったがどうやら動きがあるようだな。須佐、兵に警戒を伝えろ」
「稷兎、やはり戦いは避けれそうもないか、目的を知られたな」
宝蔵院は魔石を取り出し地面に放り投げた。印を結び術式を唱えるとゴーレムがあらわれた。
「わしとタマモは気にするな、ヤクモよ、遠慮してはいかんぞ。敵は手加減足で襲ってくるぞ」
晴明はできれば戦いたくないそんな気持であったが感ずる殺気に困惑と悲しそうな顔をした。
「ヤクモよ。手ぶらでは何だろうわしのこの刀を貸してやろう」
須佐は腰から下げた刀を柄ごと晴明に投げよこした。
その刀に並々ならぬオーラを感じた晴明は
「ありがとうございます。でもこの刀、かなりの業物のようですがいいんでしょうか」
「かまわぬわしには扱切れんのでこの棍棒の方がええでな、それは十束剣と申して卑弥呼さまから授かった神剣だ。よく切れるぞ」
突如無数の槍が空から降り下りた。晴明は走り出し隊の先頭に立つと
しきたへの
ころもまといし
土壁
隊の盾となる大きなバリアを張り槍を防いだ。
「やるのヤクモ、皆のもの突っ込め!!!」
須佐号令と共に式神兵たちが突っ込んでいった。




