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〇ヒットパレード

 導魔直伝の黄泉送りの舞を踊ろうにも五匹のオーガの兵士が厄介で隙を作らせてくれない。タマモさんもスケルトン五匹の動きを抑えることで手いっぱいで反撃のチャンスが見いだせない。奠胡(テンコ)が追いつく前に何か手を打たないと、考えるんだ考えるんだ。


 こんな時はひとつひとつ解決だ。二兎を追う者は一兎をも得ず、父さんもよく言っていた。

 トライやる・ウィーク、中学校の地域社会との課外事業、簡単に言うとお店の手伝いだが、家の旅館の売店を選択した。僕のアイディアで農家を営むクラスメイトの朝採れ野菜の販売を旅館の売店で行った。結果は売店の売り上げも下がり大惨敗。

「父さんごめんね、明日は普通に戻すよ」

「晴明、あきらめちゃだめだ。二兎を追う者は一兎をも得ずという言葉を知っているだろ。もう一度考えてみろよ」

 そうか売店も友達の野菜を一か所で両方何とかしようとばかり考えていた。

「父さん、旅館の入り口借りていい。野菜売り場を作りたいんだ」

「ほう、それでどうする?」

「うちの売店は泊り客だけじゃなく、入浴のみのお客さんも利用できるような場所にあるでしょ。表の野菜売り場から宣伝してそれ以外のお客さんも誘導してみてはどうかな」

「おもしろい、やってみろ」承諾をもらい次の日から旅館の入り口で友達たちと朝採れ野菜の販売をしてみると、大成功、父さんも「晴明よく考えたな」褒めてもらった。


 よし、まずはスケルトンとオーガを引き離すんだ。


しきたへの

ころもまといし

土壁(パレーテ)


 オーガを土壁で囲んだ。


「タマモさん!スケルトンの動き止めて!」骸骨たちの動きが止まる。

そしてスケルトンの真ん中へ飛ぶ。禹歩(うほ)を使いスケルトンの間を縫うように舞う。


ぬばたまの

その夜の命をわずらわず

おきつ来にけりあかぬわかれ

葬送(フネラーレ)


 演奏なしだが、効果ありだ。スケルトンは地面に吸い込まれていく。

 オーガの土壁を解く。よし、あれも試してみよう。


あまびこの

おとをまゐらすわりなしの

さがなしものにさながらうす


雷撃(フルミネ)ありて魔を滅ぼせ!


 ちょいアレンジ、雷はオーガを直撃、黒焦げにした。


「ハルちゃん、素敵!」

 わがことのようによろこび手をたたいている。


「おのれ、よくもオーガたちを・・」奠胡(てんこ)が追いついてきた。

「あら、奠胡ちゃん痩せてガリガリね。美味しいもの食べなくちゃ」

「きさま、タマモか!なぜこんなところにいる!俺の身となるオーガを倒しよって」

「ハルちゃんとお散歩よ。邪魔しないでよね」腕が光ると奠胡を大木に打ち付けた。

「ぐふっ!これでも喰らえ」よろめきながら手に持つ杖を掲げると火の玉が空から降り注いだ。

 へなちょこな火球だ。軽くよけるが、炎は地面に落ちるとトカゲの形となりこちらに向かってくる。


 よし、まだまだいける。新曲披露だ。


ささがにのくもよきたれい

さうなしに

竜巻(トルナード)


 火蜥蜴(サラマンダー)をすべて舞い上げて消し去った。一手先を指せている。


「こしゃくなガキめ!」あせる奠胡だが、うかつに手を出すとこの前の迦樓夜叉(カルヤシャ)の時のように隠し玉があるかもしれない。

 奠胡は魔石を取り出し地面に置くと手をつき引っ張り出すように巨大なゴーレムを召還した。


 タマモの金縛りもものともせず、僕のほうへ向かってくる。

「でかすぎるよ。まいったな」重いパンチを素早くよける。


「坊ちゃまー!!」

「タウロ!」

 タウロは金棒でゴーレムと対峙する。タウロでさえ二倍以上の大きさだがパワーは負けていなかった。料理だけでなく戦闘もエキスパートだ。


 オオガミとドーマも現れた。オオガミを見て、奠胡の顔色が変わったといっても骸骨の顔に色はないがあきらかに動揺している。

「オオガミ!貴様まで・・・」と言い残すとふりむき一目散で逃げ出した。


「やはりオオガミは怖いと見える」ドーマはそういうと

「ハルアキよく考えたな」やったね、褒めてくれた。ピコーニャが肩に止まる。

 ゴーレムはタウロが粉々に砕いてしまった。


「逃げた奠胡は追わなくていいの?」

「追跡の呪符を貼り付けた。後でよい。帰るぞ」


 導魔坊へと戻った。


 汗を流して晩御飯だ。もう慣れてしまったがタマモさんとの入浴だ。

「ハルちゃんすごかったわねぇ。奠胡の妖魔もいちころだったね」

「奠胡はオオガミさん見て逃げ出したけどどうして?」

「むこうで奠胡を殺したのはオオガミよ。ギタギタにやっつけやったから怖いのよ」

「迦樓夜叉もそうなの?」

「あいつは私が倒したわ、父さんと母さんに兄弟の仇だからね」

「えーそうなんだ、ひどい人だね。でもお父さんたちは浮かばれたね」

「そうね、でも倒して心が晴れたとかそんなんじゃなく、恨んで生きてたことが馬鹿らしく思えてきたわ。ハルトと会えて一緒に暮らしたことが私の人生だと確信したの」

「ドーマさんが大好きなんだね。僕の母さんも父さんのこと話すときそんな目をしてたよ」

「あら、ませたこと言うのね。でもハルトは私の兄さん。それ以上にはなれないわ。でも一度だけ・・・」

「なに?」

「ないしょ」タマモはそれから黙り込んだ。


 厨房を覗くと、喜ぃ公、清やんの二人で料理を作っている。

「タウロさんはどうしたの?」

「師匠は表で金棒を素振りしてます」清八が答える。勝手口から出るとタウロが無心に金棒を振っている。

「なんでそんなことしてるの?」

「あっ、坊ちゃん、今日の戦いに満足いかなかったもので特訓だ」

 何事にも結構ストイックな人だった。

「そんなの凄かったよ」

「いえ、お坊ちゃんを守るのもわしの使命だす」

 ぶんぶんを金棒を振り回している。

「タウロの美味しいご飯でもっと強くなるから任せてよ」僕としては料理に集中してほしい。

「お優しいお言葉だ、では厨房に戻るだ」よしよしそれでいいよ。

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