〇朝ごはんと京へ
翌朝
頭がガンガンして吐き気もしている。最悪だよ・・青空が見えている。どうやら湯あたりしてそのまま寝ちゃったのか。何時だろう?おなかがペコペコだ。さあ早く朝ごはんを用意してもらって学校に父さんに送ってもらおう。期末テストだ。
周りの景色の違和感に気が付く。狩衣姿の自分がいる。
「・・・えー!夢じゃなかったの」
あたりを見回すと、ドーマたちがいる。
「おうやっと起きたか」
オオガミが焚火の鍋から椀に何かをよそぐ。
「まあこれでも食べろ」
椀に入った白粥を渡された。
かすかな塩味が絶妙で美味い。まるで長い間ご飯を食べてなかったように胃袋にしみわたってくる。
「おかわり!」
「どんどん食えよ。食ったら出発だ」
「どこに?」
「京へ戻る」
今日?京?京都へ行くのかな?ドーマを見返すと
導魔は人型の紙を二枚取り出し、印を結ぶと二人の巫女へと変化した。薄いピンクの巫女服だがミニスカートの金髪と銀髪の16、17歳くらいの女の子だ。
「お前の世話係の式神だ。仲良くするのだぞ」
金髪の娘は
「茜だよ。かわいいね、あの人の弟ができたみたい、何でもいいなよ」
頭を撫でられ揺さぶられた。
銀髪の娘が
「葵。仰せのままに」
茜とは打って変わってクールな対応。
「うあ二人ともでっかい胸、ドーマさんって僕の父さんと趣味似てるね。親近感覚えるよ」
父とは似てもに似つかわぬ白面を見つめた。
「そんなことはどうでいい、ダウンロードした能力の具合はどうだハンニャを使ってみろ」
「えっハンニャ?」
<ステータスを確認しますか>
頭の中で声がする。ステータスウィンドウが現れた。
職業:陰陽師見習い
レベル1
色々な数値がウィンドウに現れていく。これってどのくらいの強さなの?
<他者のステータスを確認しますか>
みんなのそばにウィンドウが立ち上がった。ドーマさんなんてレベル150、オオガミさんはレベル200越え、タウロは60、茜ちゃんも葵ちゃんも50!色んな数値が僕より桁違いだ。
「全然ダメじゃん、どうしたら強くなるの」
「まっ戦うことだな」オオガミがそっけなく答えた。
戦うってそんなことしたことないよ。ゲームの世界かよ!ロールプレイングは嫌いじゃないけど、生身ですることかよ。スライムとかが現れて剣で戦うの?
「ところで、隠れてないでそろそろ姿を見せたらどうだタマモ!」
「やだ、もうばれちゃったエヘッ」
キツネ耳にしっぽ、これまたむっちりナイスバディなお姉さまがすぐさまドーマに抱きついた。
「やっと苦労して追いかけてきたのに冷たいのね。三年よわかる三年かかったのよゲートを開くこと覚えるのに、置いてけぼりなんてずるいじゃない、ゴブリンの巣の中にゲートポイントがあって、何匹か巻き込んじゃってきっと怒られると思って隠れてたの」
露出度の多い服を着たタマモと呼ばれる娘は、あまり反省してなさそうである。
「でもすぐに会えるなんてラッキーだわ、あらこの子がそうなのね」
突然抱きしめられた。うっこの胸、息が詰まりそうだ。でも気持ちいい、何か懐かしい匂いがする。ボーとするのもつかの間、慌ててキツネ耳さんを突き放した。
「なっ何するんだよ恥ずかしいだろ」
「あら恥ずかしがり屋さんね。タマモっていうのよ。よろしくね、ハルちゃん」
母さんみたいな呼び方するなよと、これまた父さん好みのドストライク、いかにも異世界というセクシーな衣装だ。
「まったく困ったやつだな。仕方なかろう、おとなしく付いてくるんだぞ」
「はーい」
「ハルアキ、われらは先に車で帰るが、茜と葵と一緒に歩いてくるがよい」
「えーその車に乗せてよ。京都まで歩くの!」
牛車をじろじろ見て恨めしそうにしている。タウロが支木を握りにっこり笑っている。
「少し急げば日の暮れるころには京に着くだろう。修行その一だ」
オオガミが鬼教官に見えてくる。
「えー」
「つべこべ言ってないで出発するよハルアキ!」
茜に押され歩みだした。葵は大きなリュックを背負いそれに続いた。車は見る間に見えなくなった。
旅の始まり、ハルアキの不思議な物語の幕が上がった。