▼イズモ遠征の目的
ハクトはまた眠ってしまった。その体を静かに持ち上げて須佐は休憩地に戻るためげ家を飛び跳ねて戻って行った。
待ちかまえていたオオガミは
「ハクトじゃないか、いったいどうしたんだ」
斥候に使わしたハクトが傷だらけになって戻ってきたことに驚いた。
「稷兎、ヤクモがまじないで助けてくれたんだ」
「すまないヤクモ、世話になった。おぬしは禁厭を使えるのか」
「禁厭?」
意味が分からずにいると宝蔵院が耳打ちで
「この頃は呪術の一部をそのように言うんですよ。隠していても仕方ありません。打ち明けましょう」
「ええ、そんなものです。稷兎さん」
「まだまだ何かを隠しているようだな。しかしあまり手の内を明かしていかん、イズモでは使ってはいかんぞ」
「きびつひこ様、イズモには進軍と伺っておりますが戦い以外にも何か目的があるのじゃないですか」
「仕方がない、おぬしたちの特殊な力を借りることができれば戦いは避けれるかもしれん、話しておこう。イズモにある研究施設は黄泉津という男が取り仕切ておってな。その研究員にオオヤマという男がいる。その男と娘二人をこちらで保護しようとしているんだ」
「つまり、失敗したときは戦いになるということですか。その可能性は高いということですね。私とヤクモとタマモが入れば戦いを避けれる可能性が上がるとお考えなんですね」
「その通りだ。頼むぞ」
「稷兎さん、どうしてその研究員を連れ出そうとしているのです」
話を聞いていた晴明がオオガミに問いただした。
「黄泉津のやつはおかしくなちっまたたんだよ」
後ろから声がして、晴明は振り返るとハクトがいた。
「もう大丈夫なの、休んでなくていいの」
「おかげさまで、君の禁厭のおかげで少しヒリヒリしているが問題ないよ。黄泉津のやつは亜人研究の当初の目的を忘れて、おかしなことに手を出し始めているんだ」
「おかしなこと?稷兎さん、どういうこと」
「興味深い、そもそも当初の目的とは何です」
「タカアマーラの住人の器を作るということだ」
「器?タカアマーラの住人とは何者なんです。この国の人たちを使ってどうしようというんです」
「彼らたちは精神生命体なんだが死に絶えようとしているんだ。そのための体を欲して、私や卑弥呼、黄泉津などに手を加えて手先としてその計画を実行させようとしているのだ」
その話を聞いた宝蔵院は晴明を引っ張って少し離れたところで何やら話し始めた。




