▼白兎
卑弥呼とオオガミとの意外な関係に驚く晴明たち、晴明は思わず海を見下ろしに崖の端まで歩いていった。
「須佐さん!あそこに誰か倒れているよ。ほらあそこ」
砂浜を指さす晴明
「ヤクモついてきてくれ」
須佐と晴明、タマモが砂浜に下りて行った。
「酷い、体中がやけどみたいになっているわ、ハルちゃん早く沐浴!」
真っ先に駆け付けたタマモが倒れている人影に近づいていた。続けて駆けつけた須佐は
「ハクトじゃないか!どうしたんだ誰にやられたんだ」
須佐の見知った少女であった。晴明は唱える。
あかねさしひのみたま
あくがるみたま
まもりけれ
浄化沐浴
渾身の魔力を込めその少女の治癒を施した。
だがハクトと呼ばれる少女の目覚める気配はない。
「体温がかなり下がっていますね。温めてあげないといけません、須佐さん抱きしめてやってください」
毛布を持ってきた宝蔵院はハクトを抱きしめる須佐ごとくるりと優しく包んだ。
「阿礼さん、容態はどうなの、大丈夫なのこの人は」
「ヤクモくんの術で完治までとは言いませんが大丈夫でしょう。ただ海を漂流していたのか低体温症になっているようですになっているようです。もう少し遅かったら助からなかったでしょうね。ところで須佐、この娘をご存知のようですね」
「ああ、出雲に斥候として先に先に行かせていたモズの獣人だ。どうしてこんなことにひどいことをする。敵は取ってやるぞハクト」
「私が悪いの・・・須佐」
「気が付いたのかハクト一体どうしたんだ」
「向こうにいた鮫の亜人をからかい過ぎたんだ。バカばっかりで、ドジって捕まってあの鮫肌で皮をすりむかれて海に放り出されたんだ」
「しかしここまですることはないだろう。そうだ、このヤクモが助けてくれたんだぞ。礼を言うがいい」
言われ宝蔵院の方を見るハクト
「おじいさん、本当にありがとうございます。お礼の品も何もないのですが肩くらいはもませてください」
「違うんだ、わしは阿礼見つけ出して助けたのはこっちの彼」
晴明を引っ張り寄せる宝蔵院
「よかった元気になって、僕はヤクモ、稷兎さんの従者だよ」
「あら私そそっかしくて、ごめんなさい。ありがとうヤクモ」
「でもどうして鮫人をからかったんだい、それも役目だったの」
「卑弥呼さまのご指示でオキの島に渡るときに鮫の兵士たちをそそのかしてタダ働きさせたのがこのざまで、イズモの人に助けてもらおうと思ったら海に放り込まれたんだ。その傷には海水がいいって」
「興味深い、まさに因幡の白兎ですね」笑っていたが
「もう、阿礼さん、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。薬を用意してあげてよ。まだ皮膚の再生が済んでないんだから」
「ごめんごめん、おそらくあそこに生えている蒲の穂をとって花粉をつければ、いいよ」
「ほんと?それって本当に因幡の白兎まんまだけど」
「いや、漢方薬に、蒲黄」てのがあるんだよ」




