▼兵たちの謎
「阿礼さん、次の遠征に従軍するんだろ、私の世話係に指名するのであの二人と一緒に仕えるがいいだろう。力を貸してくれるな」
「喜んでお仕えいたしますがきびつひこ様はこの戦いに賛成しておられないのではないでしょうか」
オオガミははっとした顔を浮かべ
「なぜそう思う」
「戦いをあまりお好みのようでないご様子で」
「あゝその通りだ。イズモの国は派は異なるが同じくタカアマーラから遣わされた者たちなんだ。話せばわかるはずなんだ。そのため私が帯同するのだ」
「その思いお助けいたします」
そう言って礼をして辞していった。
「ただいま」
「どこに行っていたの心配したよ」
「きびつひこ様に呼ばれて少し話をしたんだ。なんとかうまく信頼を得たようだ、これで調査もはかどるだろう」
期せずして舞い込んだ幸運を呼んだのはほかならぬタマモであったが。そして遠征の日がやって来たのであった。
村の出口で警備のカイトが
「ヤクモ、元気で頑張って来いよ。俺も遠征に行きたかったんだがな。村の警備をがんばるぜ」
晴明は肯くのみであったがタマモが
「カイト!行ってくるね。お土産期待してね」
「タマモちゃんはよく言葉を覚えたな。会えなくて寂しくなるよ」
投げキッスをして村を離れていった。
総勢五十名ほどの軍勢だ。まずは今の堺、モズという卑弥呼の治める村でさらに人員を増やしながら進行する予定なのである。
「天鼓君、モズって古墳の一杯あるところだね」
「かなり力を持った豪族がいるそうなんだがオオガミさんが言うにはやはりタカアマーラの人間のようなんだ。それより晴明君気が付かないかい。兵士として同行する人たち」
「そう、もしかして五つ子とか双子とかばっかりじゃない。おんなじ顔してる人ばっかりだよ」
「どの人も無口で全然かまってくれないのよ」
「愛想のいい母さんにもそんな調子の人たちばっかりだよ。今まで村のどこにいたのかな」
「観察をしていたのですが晴明君なら正体がわかるんじゃないですか。おそらくこれがヒントです」
宝蔵院は晴明に一枚の呪符をわたした。
「そうか、彼らは式神だ。間違いないそんな気配がするよ」
「導魔が使っていた式神と同じなのそれにしては愛想ないね」
「かあさん、葵ちゃんや茜とは違ってパーソナリティ設定がないんだよ。戦争のための道具だよ」
「卑弥呼の術でしょう。本当の人間はオオガミさんの取り巻きの研究員と呼ばれている四五人だけですね」
「注意するのは彼らだけってことだね」
夕方には一行はモズへとたどり着いたのであった。




