▼高天原
「かあさん、もう無茶ばっかりしないでね」
心配顔の晴明はタマモの目線に合わせていった。そんなことを意にも介せず柿を手渡すと
「また遊びに来ていいってオオガミっちは言ってたよ。任せときなさいよ母さんに」
「とりあえずは糸口ができましたねさすが晴明君のお母さん」
「天ちゃん、オオガミっちは私がこの言葉をしゃべるのに驚いてたわよ。なんだっけ、そう初期計画時に逃げ出した実験体がどこかに集落を作っているんだろうって、よくわかんないけど言ってたわよ」
「実験体?どういうことでしょう」
「かあさん、僕たちのことはしゃべったの」
「だって、説明できないじゃない。子供一人でこんなとこにいる理由が」
「それでオオガミ氏はどう言っていたんです」
「べつに天ちゃんのことはよく知っていて気になってたみたいよ」
「ほかにないか言ってませんでしたか。その実験体のこととか」
「うーん・・あっこの言葉をタカアマーラの言葉とか言ってたわね」
「タカアマーラ、高天原のことか」
「天鼓君、たかまがはらって」
「古事記には、地上の人間が住むこの世界を葦原中国と、地中にあるとされる根の国・黄泉に対し、「天地のはじめ」に神々の生まれ出る場所としてその名が登場するんですよ」
「神様のいるところってことなの天ちゃん、オオガミっちは天国から来たの」
「宇宙人かもしれないよ。世界各地にそんな伝承があるもんね」
「いずれにせよこの世界の者ではないということですかね。興味深い」
「かあさんも天鼓君も気を付けてこの事態に当たらないといけないってことも確かだよ」
「初手は何とか乗り切ったけれどもこれからの展開についてゆっくり考えたいのでちょっと散歩でもして考えます」
と言い残すと宝蔵院は出て行ってしまった。
「それで母さんに必要なのは」というとタマモの頭をわしづかみ
प्रज्ञा, prajñā英知を与え
「なになに晴ちゃん!!頭が頭が」
タマモは目を回して倒れ込んだ。
「かあさんだいじょうぶ」
「晴ちゃんいきなり何するの」
「こっちの言葉がわかるようにインストールしたんだ」
「もうそれならそれと先に行っておいてね」
村の中を当てもなくうろうろと考え事をしながら歩く宝蔵院
「阿礼じいさん!ちょうどよかった。きびつひこ様が探していたぞ。俺についてくるんだ」
いつも城門を守っているカイトがそう言って近づいてきた。目をつぶり頷く宝蔵院
「わかった連れて行っておくれ」
何か思いついたような顔をしてカイトに従う宝蔵院であった。




