▼タマモ騒動
晴明はタマモにこの時代のことをざっと説明しながら、ミヤマの村へと戻って行った。村の入り口では、やはりカイトがタマモについて質問があった。
「そうかヤクモの妹か、なんとなく面影があるな。カイトだ、よろしくな」
タマモはきょとんとしている。わざとではなく言葉が本当に分からないのだった。
晴明は「カイトさんに挨拶をするんだよ」タマモに即した。
「タマモだよ。よろしくねカイちゃん」
「タマモというのかかわいい子じゃないか、大きくなったらさぞ美人になりそうだ」
「晴ちゃん、なんて言ってるのカイトは」
「よろしくと言っているんだ」
変な勘違いされては困るので美人と言われたことは黙っておいた。
「なんか嘘ついているようね、母さんはわかるのよ晴ちゃんの嘘は」
「もう仕方ないな大きくなったら美人になるぞとお世辞を言っているんだ」
タマモはにっこり笑ってカイトに投げキスをした。晴明はあわててタマモを引っ張り宝蔵院の家へと帰っていった。
「あらすてきなお家ね。晴ちゃんお父さんと一緒にこんなお家を見に行ったのはどこだっけ」
「富山県だよ、ほらブリしゃぶ鍋のポン酢が美味しいって言ってじゃない」
「ああ、お刺身も美味しかったわよね。あさひ町だったけ」
やはり息子と同じく食と記憶が連動していたようだ。
「そうだオオガミっちは見つかったの、相変わらず不愛想だった」
「見つかったよ、ここでは稷兎という名前で暮らしていて卑弥呼の弟なんだ」
「ひみこ?誰それ」
「この国の女王なんですよ。日本の歴史書、古事記や日本書紀には登場しないんですが魏志倭人伝という中国歴史書に記述があるんです。まあそれと同一人物かどうかは不明ですが」
「天ちゃんありがとう、女王様なんだひみこちゃんは、その弟がオオガミだなんて驚きね」
「それがね、笑っちゃうんだけど新月の時のオオガミさんなんだよ」
「なにそれ、あの陰気臭い引きこもりの姿なのじゃあ根暗な感じで話しかけにくいとかそんな感じ」
「まだ接触できてないんです。しばらくして従軍の準備が整えば接触の機会ができるのですが」
「私に任せてよ。家はあの大きな建物でしょ。飛び込んでくるわ」
というとタマモは飛び出していったのであった。
「まただよ。ごめんね天鼓君、慎重に作戦考えてたんでしょ」
「いやいや返っていいかもしれませんよ。お母さんの行動力は分析不能なところありますからね」
「とりあえず後を追いかけて様子を見よう天鼓君」
タマモの後を追いかけていった二人であった。




