▼吉備津彦
真っ暗だ、そう言えばオーディンの馬は墳墓に埋葬された副葬品とか言っていたな、晴明は呪文で明かりを灯もそうとしたとき、光が差し込んで目をしかめる晴明に
「晴明君、やっと会えたね」
松明を持った老人が話しかけてきた。
「えーと、どなただですか」
「いやだな僕だよ僕」
晴明は老人をじっと見つけ
「えー天鼓君どうしておじいさんなの」
よく見れば歳は取っているが紛れもなく宝蔵院であった。
「いまは阿礼と名乗っているんだけど、実はカグヤに頼んで今から百年前にこっちへ飛ばしてもらっていたんだ」
「百年前!!どうしてそんなことを・・・そうだよね調査をしたかったんだったね、それで首尾はどうだった」
「大変充実した百年だったよ、でも古代史の常識を書き換えちゃうので公には発表できないし誰も信じないよ。でも僕は僕が満足できれば幸せだよ」
宝蔵院はしわだらけの顔で笑っていた。
「でもどうしてそんな年寄りになっているの?オーディンの馬が変化しているだけでしょ」
「おっと説明を忘れていた、これを見て見な」
鏡を晴明に見せた。
「あれ、オーディンの馬のままだ。容姿が変わっていない、天鼓君はどうして」
「カグヤさんも説明不足で僕もまさかあんな姿では調査できなかったもので、元の姿のマトリックスを作り上げて呪符にして偽装しているんです。この呪符を張ってください。晴明くんのマトリックスが封じ込めています」
呪符を受け取り偽装を施す晴明、呪符が体に取り込まれた。もう一度鏡を見ると
「あれ成長している!?」
「いろいろ便利かと思い十八歳程度に組み立ててみました」
鏡を動かしあれこれと見つめる晴明は
「いいね、これなら子ども扱いされずに済みそうだ」
成長した自分に満足げであった。
「気が済みました、出発しますよ」
鏡に見惚れる晴明を促して墳墓を出た。
「ここはどこなの天鼓君」
「奈良ですよ。ここから数キロ先にみやまという村があります。そこに卑弥呼がいますので合わせましょう」
「卑弥呼に会えるの、ドキドキするな」
「おっとその前にこれを補充しておいてください」
数枚のメダルを渡す宝蔵院
「術を使わない限り一枚もあれば一年は燃料になります。妖怪の類を見つけたときは積極的にに倒して予備を集めていてくださいね」
「うんわかった。そんなに沢山いるの」
「この世界は呪術が支配する世界になっているんだ。卑弥呼はその世界の頂点さ、強力な力を宿している」
「怖そうな人だね。大丈夫かな。それとオオガミさん情報はどうなの」
「見つけてあるよ。というか出会っちゃったよ。先に言っとくね卑弥呼の弟だったんだ」
「えっ本当!!ほんとにオオガミさんなの」
「多分間違いないと思う。きびつひこと名のってますが」
「どっかで聞いたことあるな」
「伝承では桃太郎の元となった人物ですがどうでしょうね」
二人はあれこれとこの時代のことを話しながら街へと向かって行った。




