◆魔法の血
宝蔵院が興奮して調べた結果を話し出した。
「ヤーシャさんの結合された腕もスキャンした結果、まったく元通りになっているんです。その方法がすごいんです」
「まさかまたロストテクノロジー?」
「そうなんです。百花さんの血を分析したところナノマシンのようなものだったんです」
「なのましん?」
「ウイルスサイズほどの小さな機械なんです。そのマシンがヤーシャさんの生態組織に擬態していたんです」
「何か後遺症とか言った体に悪影響はないの」
「治癒した部分ではマシンは自然消滅しているので後遺症とかはないでしょう。医学の劇的進歩を生みますよ。再現できれば」
「天鼓君でも作れないの」
「残念ながら根本理論がわからないのが現状です」
「オオガミさんの血も同じような効果があったって父さんが言ってたけど晴海のママの血とは違うものなの」
「おそらくオオガミ氏の血液を模倣して作られたマシンではないかと思います。ただオオガミ氏の血は劇薬です。適合者でないとバーサーカーとなってしまうのですが百花さんは月からの影響は受けないのが特徴です」
「ちょっと待って、晴海は百花さんから生まれたんだからそのナノマシンの影響はないの」
「そう思って前に採取した血を調べてみたのですか。不活性化したナノマシンが含まれていました。何かの作用で動き出すかもしれません」
「そのメカニズムが解明できれば晴海のママも普通の人に戻れるんだよね」
「確かにその通りです。あの不死身のアスタロトに適用できればあいつを倒すことができるはずです」
「さっぱり何の話をしているのかよくわからないけどあの龍族の恥アスタロトをやっつけることができるんですね」
「ヨシュアそうだよ」
「なに話してるんだい」
久遠がやって来た。
「なんだか体中が石のようにこっているんだ。風呂に入ってこいと晴人さんに言われたんでお邪魔するよ」
確かに石のようになっていた久遠だった。
「晴海様のご両親とお話ししていろいろ聞いたよ。晴明君心配だよね。ご両親には私が必ずこの身に変えて娘さんを助け出しますなんて言ったら、晴明君よりよっぽど君に娘をと注がせたいよなんて言ってえらく気に入られたけど」
まだまともに晴海のパパと話ができていない晴明にとっては耳の痛いことばであった。




