◆略奪
晴海を抱き起す晴明
「ヤーシャさん、すみません僕のせいで」
「気にするな晴明、たかが腕一本だ」
「たかがなんて言っちゃだめよ。ヤーシャ、こっちへ来なさい」
百花がちぎれ飛んだ腕を持ってヤーシャを呼んだ。
ナイフを取り出した百花は自分の指先を少し切り流れ出る血をヤーシャの腕に擦り付けると元の場所に戻して
治癒を賜る精霊の
その御心で苦しむものを救いたまへ
治癒の技を復元
なんとちぎれたヤーシャの腕が繋がってしまった。
「なんと言っていいのかありがとう」
礼を言うヤーシャの首筋にキスするように百花は血を吸った。
「これでいいわ、あなたの血は美味しかったわ」
「すごい治癒魔法ですね」
「俺も何度も助けられたからな、百花の力で、それより晴明君、青龍のムチを」
晴明はアイテムボックスから二本のムチを取り出した。
「これでいいですか」
「一本でいいんだそれをこうして」
と晴海の体を変わった結び方で縛り始めた。呪術が込められているようだ。
「そして俺がキスをしてやれば力を制御している封印が解けて自我を取り戻すはずだ。
抱き起そうとした瞬間疾風が吹き晴海をさらっていった。
「困るなこの娘はまだまだ必要なんだ。じゃあな」
アスタロトがそう言って晴明が飛び降りてきた天窓から消え去っていった。
「くっそ!!アスタロトめ、いつまで俺の娘を・・・」
晴明は飛び去った天窓を見つめてこぶしを強く握った。
ワーロックの船から上陸組のヨシュアがゼイゼイと息を切らしながらゴブリンをすべて退治して監獄に入ってきた。
「晴海はどこです」
ヨシュアが皆に聞くが暗い表情に言葉が続けられない。
「大丈夫、必ず助け出すから晴海のパパとママも任せてください。ヨシュア、久しぶりいい知らせがあるんだ」
晴明は監獄を出て海を眺めた。
「晴明、こんなところに久太郎に似た石像があるぞ」
ヨシュアは炭化冷凍された久遠を見つけた。
「これは久遠さんに間違いないよ。異世界ゲートで見た晴海と一緒にあった像だよ。どうなっているんだろう」
カグヤも追いついてきて
「私なら直せるわ」
と言って久遠の像に触れると炭化が解けていった。
「み、見えないよ。目が・・・・」
「すぐになれるわ、どうしてこんなことに」
目をこすりながら久遠は
「晴海様と一緒にいたところに鉄鼠と油すましが現れてから記憶がないんだけど、晴海様は」
「また連れ去らわれたんだが、君は一体誰だ」
ようやく視界が戻ってきた久遠は
「捜査零係の久遠と申します。もしかしてあなたは」
「晴海の父だ」
「初めまして、申し訳ありません、僕が付いていながら晴海様が誘拐されてしまって」
「久遠さんは晴海の警察での面倒をすべて見ていたバディなんです」
「そうか晴海が世話になっていたのか、それはすまなかった」
晴海の現状を晴明は久遠に説明した。
「そうですか、せっかくお父さんとお母さんに会えたのに、僕も奪還作戦には身を粉にして手伝いますので任せてください」
ワーロックの船の横に竜宮丸がたどり着き、サマラが下船してきた。
「晴ちゃん、あれは誰、また新しい女子連れてきたのやるわね」
「母さん、違うよ、あの子はサマラ、龍族のお姫様だよ」
「龍族のお姫様!!本当なんですか」
ヨシュアが急いでサマラの所へ走っていったが無視をして晴明に寄り添って行った。
「とりあえず、晴明、話は新ドーマハルト号で聞こう、みんな戻るぞ」
晴人はツーロン島から飛行船へと場所を移していった。
「サマラ、これが僕の仲間たちさよ」
「サマラです。お会いでき光栄です」
丁寧にお辞儀をして皆の前に立った。晴明はそれぞれを紹介していった。




