◆いつものタマモ
ワームを足場に晴海の方へと飛びあがる。床はひび割れワームの死骸と共に音を立て崩落を始めた。地下の牢獄が少し覗いている。
「晴明遅いぞ、晴海ちゃんを何とかするんだ。青龍のムチがキーアイテムだ」
「父さんわかった、晴海、絶対に元に戻してやるからね」
その声にも無表情に晴明に向かっても爆裂呪符で攻撃するが晴明はよけもせずに前に進んでいく
「晴明君!無茶しちゃだめだ、私と百花で何とかするから時間を稼ぐだけでいい」
叫ぶ永晴だが結界に囚われたままであり、晴明の放った重力でできた地割れで近づくことができない。
「任せて晴海のパパとママ、泣いてるあの子を放っておけないよ」
泣いている?鉄面皮で感情をあらわさない晴海を見て晴明はある昔ことを思い出していた。極悪非道の女、母の両親の仇であるカルヤシャだ。その心の奥に囚われたときにあった泣く少女のことだった。
あの時のように晴海の心に入り込めたら何とかなるのではと思うのだがそのすべを知らない。
晴海はさらにメダルを取り出して召喚したケルベロスに投入する。
猛獣ケロべロスはさらに肥大化して晴明に襲い掛かる。
飛行船、新ドーマハルト号のコックピットではタマモが騒いでいた。
メインモニターに晴明が登場したからである。
「晴ちゃん!!!」
「やっぱり持っている人ですね晴明君」
「わーい!晴明兄ちゃん、かっこいい」
やんやの騒ぎであるが大ピンチを迎えた晴明
「どうすればいいの私行って助太刀したいから天ちゃんなんとかして」
「うーん先発隊が使ったパラシュートの予備使いますか」
と宝蔵院が言う前にタマモは消えていた。
「テンテン、あそこタマモママ」
ワーロックの船を曳航していたロープを伝って滑り降りていくタマモの姿があった。
先に対峙した晴人と白鳥、永晴と百花、オオガミとヤーシャの六人は束縛の結界にいまだ囚われたままで晴明とケルベロスの戦いを見つめるだけであった。
「ハルト、何とかこの結界をどうにかしてくれ」
ヤーシャが晴人に頼んだ。
「周りを見て見ろ呪符が見えるだろう、時限式の結界を張っている。あれさえ剥がせば動くことができる」
「わかった、ネロ!!」
従魔のヘルハウンドを呼んだ、今はリリの影に隠れているのだがその声に反応した。
ネロは勢いよく飛び出すと先ほどタマモが使ったロープの上を走っていく、途中タマモを追い抜こうとするとタマモがネロに飛びついた。
「ちょうどよかったわ、ネロちゃんお願いね」
ゴブリンたちと戦うヨシュアたちの間をすり抜け監獄の入り口にあっという間にたどり着いた。
「へい!助けに来たわよ、晴ちゃんお帰りー」
能天気な声が響くと
「タマモ、それ以上前に行くな!そこいらにある呪符を焼き尽くせ」
「はーい、ハルト、任せてね」
狐火を放ち呪符を消滅させていくと六人の自由が戻った。
「やれやれ、俺たちも行くぞ、百花」
永清と百花が晴海に近づこうとするがそれより早くヤーシャが晴明の所にたどり着いていた。
晴明は思った以上の戦闘力のケルベロスに手を焼いていたのだった。
ヤーシャはケルベロスに突っ込んでいくと手榴弾を三つの首の口の中に投げ込んだ。
炸裂音と共に首がはじけ飛びケルベロスは突っ伏したが破壊された頭が変形していく、それはワーム状になり伸びながらヤーシャを追尾し始めた。
「ヤーシャさん後ろへ」
晴明が指示する。
ちはやぶるかみのちぎりしほむろあれ
おほけなしものをしたたむれ
火柱
ケルベロスの下から業火の柱が吹きあがった。
本体部分を焼き尽くしたのだが首が変化したワーム三匹は生きていた。
晴明に襲い掛かかろうとしたとき銃声が鳴り響きそのワームをハチの巣にする。
「晴明君、あとでゆっくりと話したいことがあるが、今はここは任せて晴海の所へ」
「わかりました」返事をすると邪魔をするゴブリンを切り裂きながら晴海の所へ向かう。
弓を構えたリリム(晴海)が晴明を射抜いた、その矢は不意を突かれた晴明の眉間を貫いたように見えたが突き飛ばされて倒れ込む晴明、ヤーシャが代わりに矢を受けてしまった。
左腕を打ち抜かれちぎれ飛ぶヤーシャの腕がスローモーションのように見えた。
「ヤーシャさん!!!」
驚愕の表情の晴明は晴海をみた、やはり無感情の顔に
「お願いだ、晴海もうやめて」
晴海のみぞおちを殴りつけ意識を飛ばせた。




