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●山越えと水浴び

 三匹にマンティコアは増えたが、三人いれば一人一匹だ。オオガミは三振りの斬撃で頭、心臓、尻尾を切り裂いた。アルジェは氷槍を三か所に撃ち込み決着をつけた。

 さて俺は、その爪を俺の頭へたたき込もうと立ち上がったところをさらに上に飛び、縦真っ二つにした。

「本当にAランクのクエストか?簡単すぎる」

 二つに分かれたマンティコアの間に立ちオオガミたちに軽口をたたいていた。

「いてっ!」尻尾の蛇に刃は届いていなかった。クラウドソードで薙ぎ払ったがめまいがする。

「大丈夫かハルト!」オオガミが傷口から毒を吸い出した。

「ふらふらするが大丈夫だと思う。アルジェ、マンティコアを収納してくれ。

村へ戻ろう」

 アルジェが印を結ぶと地面に魔法陣が広がり三匹の死体を収納した。オオガミの肩を借り村へと進み始めたがめまいがする。


「大丈夫だと思います」とハルナはいうと、両ひざをつき祈る姿をした。


治癒を賜る精霊の

その御心で苦しむものを救いたまへ

解毒の技を沐浴(アブル)


 ハルナの精霊魔法が発動した。ハルトの傷口に手を当てると、優しい光がつつんだ。

 ハルトの血色がみるみるよくなる。そして目を開けた。


「泣くなタマモ、もう平気だ」タマモの頭をなでる。

 ステータスを確認した。毒はもうすっかり解毒されている。抗毒性のステータスが上がり毒に対してほぼ無力化を得ていた。

「ありがとうハルナさん、助かったよ。それが精霊魔法ですか」

「ええ、詠唱を伴い精霊の力をお借りして体を癒すことが出ます。お役に立ててよかったです」


 タマモが”はると”と書いた紙を渡してきた。

「えらいな字が書けるようになったか、算術はどうだ。これは」指を三本だした。

「みっちゅ!」そして手を広げ

「ひとつ、ふたあつ、みっちゅ、よっちゅ、いつつ、むっつ・・・・ななつ、やっつ、ここのつ・・とう」

 指を折りながら最後に両手を広げた。

「よくやった、しかしイソルダうまく教えたな」

「いえ、ハルナ様が、教師をされていらして教え上手でした」

「そうか俺のことからタマモまでいろいろお世話になった」

「いえいえ、たいしたことではありません。何かお力になりたかっただけです」


 村長が帰還を知り訪れた。

「このたびはマンティコア討伐クエスト達成ありがとうございました」

 アルジェが魔法陣から三匹のマンティコアを出して確認をもらった。

「おお、三匹もいたのですか。お安い報酬で本来ならSランクの依頼にもかかわらず申し訳ありませんでした」村長は申し訳なさそうに頭を下げる。

「いや、いいんだよ。練習代わりにこなしただけだから、それからここに泊まっていいかな。明日すぐにメラク村まで旅立つ」

「もちろん、村の大恩人です。食事もご用意させていただきます」

「酒はあるかな」

「はい、地ワインの赤が名産品です。いい年のものを召し上がりください」

 ここへ来る途中大きなブドウ畑があったので少し期待していたが思った通りだ。


 キジ、シカ、ウサギといったジビエ料理のもてなしだ。ワインはメルロー種のような深みのある赤、プラムのような香り、程よいタンニンの苦みいい酒だ。

「これを何本か分けてくれないかもちろん金は払う」

「いえ、どうぞお受け取りください」一ダース入の木箱を贈呈してくれた。これでベールへ着くまで晩酌に困らない。顔がにやけている。

「おいちいぃ」タマモがまた勝手に俺のワインを呑んでいる。

「だめだぞタマモ、これも大きくなってからだ」ワインを取り上げた。飛んだうわばみになるぞこの子は先行き心配だ。


 ハルナはワインも肉料理も食べている。てっきりエルフはヴィーガンのような食生活と思ったが違うようだ。

「どうです。この村の料理は」ハルナに尋ねた。

「おいしいですわ。このお酒もとっても料理に良く合って、ドメルではメニューがよくわからなくてサラダだけ食べていたものですから」

「ところで立ち入ったことを聞くようだが何故ベールへ?答えたくなければいい」

「私の里を突然、飛竜(ワイバーン)が一匹襲ったのです。ちょうど男衆は狩りに出かけ女子供だけが里にいるだけでした。そこへ旅の途中の殿方が異変を察知して馬で駆けつけ退治していただきました」

 かっこいいな、俺もやってみたい役だな。

「少し怪我をされ、私が看病して三日間ほど里に逗留されました。その方がどうしてられるのか。心配でベールの方とお聞きしておりましたので、こうして向かっています」少しワインのせいか顔が赤くなっている。はっはーん、ほの字だな。うらやましいやつだな。俺もロマンスが欲しいよ。にやけた顔をしているとタマモがじっと俺を見ている。そうでした。俺には陽子。

 かたずけを皆に任せ腹も膨れ少し酔いも回ったのでそのままごろッと横になり眠った。

 朝、井戸の水で顔洗い、軽い朝食の後メラク村へと馬車を進めた。数時間進んだところで山越えの道となった。馬車では道が狭すぎる。俺はアルジェから教わった収納の魔法陣を試してみた。

「すごいですわ。ハルト様、私の術より収納量が大きいみたいです」

 そう、どんなこともコツをつかむことが得意なのだ。転生者の番人が言っていたギフトだろう。魔法力も人より二桁多く持っている。あまり騒がれても何なのでこれは偽装のスキルで隠していることだ。

 タマモを時折背負い山を越えたところに大きな滝が流れていた。


「どうだ、ここで飯にして、この川で水浴びでもするか」しばらく風呂にも入っていなかったのですっきりしたい。オオガミは見張っていると言って浴びようとしなかったが、髪は脂でガチガチ、匂いもひどい。命令して無理やり水浴びをさせた。男たち二人は先に水浴びを済ませ、昼ごはんの準備をして、女性陣の水浴びを待つことにした。

「キャッ」小さな叫び声がした。刀をつかみ川へ入った。河童が二匹倒れていた。イソルダ、アルジェが倒したようだ。彼女らに武器は要らない。

「すまない」すぐに戻った。いい目の保養だったが覗いてしまった形になりばつが悪い。 戻ってきた女性たちはあまり気にもしていない様子だった。

「ハルトエッチ」タマモだけはしっかり俺の様子を見ていたようだ。

「心配で駆けつけてくださったのよ」ハルナが言ってくれたことがせめてもの救いだ。


 それから数日、フェクダ、メグレズ、アリオト、ミザール村と泊まりいよいよ今日の夕暮れにはベールの街へ到着する。それぞれの村でベールの評判を聞いたがどの村でも上々の返事を得ていた。旅の一区切りだ。

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